声優

【声優本】『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』(平光琢也)

116.jpg感想・レビュー

「現場はどんな人を求めてるんだろう?」

「オーディションに合格するためにはどうすれば?」

声優を目指すの多くの人がこうした悩みを抱えるものですが、声優業界の裏側はあまり語られることがないですよね。

ですが、近年では声優関連の書籍も多く出版されていて、もちろん声優を目指す人に向けた本もいくつか販売されています。

今回は、その中でもおすすめの平光琢也さんの著書『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』について紹介していきます。

本の詳細と内容、そして感想・レビューをわかりやすくまとめたので、現在声優を目指す人だけでなく、声優に興味があるという人もぜひチェックしてみてくださいね。

『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』

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出典:Amazon.co.jp

  • 著者:平光琢也
  • サイズ:B6
  • ページ:256ページ
  • 発行日:2014/3/31
  • 出版:幻冬舎コミックス

【内容】

  • はじめに:p.2
  • 1章:p.9
  • 2章:p.43
  • 3章:p.61
  • 4章:p.143
  • 5章:p.177
  • 6章:p.195
  • 7章:p.221
  • おわりに:p.252

著者紹介

1955年生まれ。岐阜県出身。音響監督・舞台演出家・俳優・脚本家。日本大学芸術学部演劇学科在学中に「劇団摩天楼」を結成。また、演劇集団「円」に研究生を経て俳優として入団。1983年、「劇団摩天楼」で共に活動していた赤星昇一郎、郷田ほづみとで結成した「怪物ランド」で『お笑いスター誕生!!』に出場。10週勝ち抜きチャンピオンとなり、深夜の冠番組『ウソップランド』でカルト的人気を博す。怪物ランドの活動休止後は、舞台演出家・音響監督として活躍。『ミュージカル 美少女戦士セーラームーン』の演出・脚本を務めるほか、『ミュージカル HUNTER×HUNTER』、『ロックミュージカル BLEACH』などの演出も手掛けた。また、音響監督を務めたアニメは『テニスの王子様』『HUNTER×HUNTER』『遊王デュエルモンスターズ』『ヘタリア Axis Powers』など、40本以上を数える。

出典:『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』著:平光琢也 出版:幻冬舎コミックス

著者は『テニスの王子様』などを手掛けた音響監督として有名な平光琢也さん。

ちなみに、音響監督とは、収録現場における責任者であり、演者と音響スタッフの間にたって指示を出す役割の人をいいます。

効果音(SE)や音楽(BGM)はもちろん、セリフの言い回しやニュアンスなど、音に関する演出を行う決定権を持っており、作品によってはオーディションや審査に携わることもあるほど声優と近い立場のスタッフですね。

また、「怪物ランド」のメンバーとして芸能事務所・田辺エージェンシーに在籍し、音響監督や舞台演出だけでなく俳優としての活動経験もある方です。

書籍紹介

『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』というタイトル通り、この本では7つの章に渡って30項目のアドバイスが語られてます。

以下は、書籍を読んでみた中での各章のざっくりとした印象です。

  • 1章:自己プロデュース
  • 2章:三つの"誤解"について
  • 3章:演技(表現)
  • 4章:オーディション術
  • 5章:プロモーション
  • 6章:演技(テンション)
  • 7章:声優論

「声優」に関する本は多く出版され、その多くは演者側である声優の著書が多いですが、こちらの本の特徴は、音響監督の立場で綴られていることです。

もちろん、これから目指す人にとってはイマイチ実感できない内容や半信半疑に聞こえることもあるかもしれませんが、声優になった自分自身を客観的に捉えてほしいというメッセージがいたるところに込められています。

また、将来のビジョンから演技のメソッド、さらにはオーディションではまず何をすべきか?などなど、著者の経験や知識をもとにそれらがかなり詳しく解説されており、各章の間にあるコラムもちょっとした教訓になります。

こちらは一部抜粋ですが、とても簡潔でストレートな文章で綴られています。

最初の名前を言うときの声と、オーディションの台詞を言うときの声があまりにも違う人がいますが、これはあまりいい効果があるとは思えません。

つまり、こちらサイドとしては、できるだけ地声で無理せず演じている声が、キャラクターに合っているかを聞きたいわけですから、あからさまに無理して作っているとわかる場合は合格しません。

(中略)

ですから、みなさんは自分の声を信じて、地声を鍛えましょう。

大切なのは、無理のない声で勝負することです。

出典:『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』p.160(3) :平光琢也 出版:幻冬社コミックス

感想・レビュー

それでは、以下で実際に読んでみた感想から、良かった点・気になった点に分けて紹介していきます。

良かった点

前述したように、この本の特徴は"声優を選ぶ側"である音響監督の目線でアドバイスされていることですね。

そのため、声優としての自分を客観的に考えるためのアプローチが多いことが魅力です。

声優本の著者といえば現役声優がほとんどですし、学校や養成所でも声優講師から学ぶことが一般的です。

僕自身もそうした経験から俳優・声優からアドバイスを受けることが多かったですが、この本を読んでみて、また違った視点で新しい発見ができたことがたくさんありました。

二つ目は、現場における実践的なアドバイスが多いことです。

例えば、「台本にある〇〇のような文章を目にしたときは...」とか「監督から〇〇と言われても...」など。

その場の状況がイメージしやすく、各項目でかなり具体的なアドバイスが記されています。

2章・第3章で語られる演技の土台となる心のつくり方は、第4章のオーディションアプローチにも繋がっていて、順を追って理解できる点もわかりやすかったですね。

もちろん、現場監督の意見ということで説得力もありますし、最終的には将来のビジョンまで解説されていることから、この一冊でかなり深く具体的なポイントが理解できるはずです。

気になった点

次に、いくつか気になった点もあったので挙げていきます。

一つは、読者によって向き不向きがあるというところです。

特に、著者が一番伝えたい部分である第6章は、「テンションキープ」や「ギアチェンジ」、そこから「コント」についても触れていて結構難しい内容です。

感覚的な要素もあることから、演技未経験者だとやや理解しにくいことかもしれません。

また、写真やイラストなどがなく、多少の図が掲載されているくらいで内容のほとんどが文章での解説です。

「一から業界知識やトレーニング方法を...」という内容でもないので、やはりこのへんは実際に経験しながら読み返す方がしっくりくると思います。

そういう意味でも、自身のステップアップに沿って読み返していきたい一冊になるかもしれません。

こんな人におすすめ

前述した良い点・気になった点から、個人的には今現在、本格的に声優を目指している人にこそ読んでほしい一冊です。

もちろん、これから声優の道に進む、あるいはすでに声の仕事に従事している人にも参考になる内容ですが、日々レッスンで生まれる悩みや疑問、さらには将来の見通しが少しだけ見えてくる時期が一番実感しやすいタイミングかもしれません。

この時期こそ今後のキャリアについて改めて考え直すことも多いですし、専門学校や養成所であればオーディションや審査も増えてくる時期です。

この本から、今よりもさらに視野を広げることができれば、きっと今後の活動や実践の場でも役立つことが多いはずです

まとめ

  • 音響監督の著書
  • 端的でストレートな文章
  • 現場で活きる実践アプローチが多め

というわけで、今回は音響監督・平光琢也さんの著書『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと』について紹介しました。

現場側からの声優を見た稀有な一冊であり、ここまで音響監督の思っていることを代弁してくれた本はかなり少ないと思います。

現在、本気で声優を目指している方はもちろん、こうした道に興味がある人も今後ぜひ手にとってほしい一冊だと思います。

ライター:ゆうき

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