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『マインクラフト』が学習教材に!ゲームと教育の新しい関係とは

【確認済】09 (2).png以前、ゲームは「遊び」であり、ともすれば勉強の「敵」であるかのように扱われていました。しかし、近年では組織運営や教育現場、従業員の評価といったゲームとは関係がないとみなされてきた分野に、コンピューターゲームのデザインや原則を持ち込むことで効率アップを図る「ゲーミフィケーション」という概念に注目が集まるなど、大きな変化が訪れています。

特に教育の分野では、コンピューターゲームをそのまま教材として利用する動きも活発となっています。今回は教育分野でゲームがどの様に利用されているのか、そのメリットはどこにあるのかを、皆さんもお馴染みの『Minecraft(以下マインクラフト)』を中心に紹介します。

【目次】

  • ①ゲームが当たり前のように学習教材に
  • ②教育にゲームを導入するメリットは?
  • ③教育現場で注目される『Minecraft』
  • ④まとめ

<①ゲームが当たり前のように学習教材に>

2000年代の頃まではゲームが脳に悪影響を与えるとする主張「ゲーム脳」が広くマスコミに取り上げられるなど、ゲームは教育にとって「悪」であり「敵」であるという考え方も珍しくありませんでした。

しかし、子供の頃ファミコンで遊んだ世代が親となり、ゲームが社会へと与える影響に関する研究が進んだことで、従来ゲームが関係ないと考えられてきた分野にゲーム的な要素を取り込むことで効率アップを図るといった考え方も珍しくなくなってきています。

学習分野においては、クイズ形式で楽しく学べる学習教材といったものはコンピューターゲーム黎明期から数えきれないほど作られてきており、今ではごく当たり前の存在と言えるでしょう。

近年ではこうした状況はさらに進んでおり、ゲーム風の学習教材といった枠組みを超えて、人気のコンピューターゲームをそのまま学習教材として活用するといった取り組みも珍しくなくなりつつあります。



<②教育にゲームを導入するメリットは?>

急速に進みつつあるゲームの教材利用ですが、具体的にどのようなメリットが考えられるのでしょうか?大まかに考えて、以下の3つが代表的なものと言えるでしょう。

ひとつ目は、モチベーションの維持です。学習を継続的に行うためにモチベーションを高く保つことが重要なのは、皆さんも実感していることでしょう。ゲームを教材として利用することで、課題に楽しく取り組むことができ、興味や関心を維持しやすくなります。一見当たり前のことですが、これはゲームを教材として利用する最大のメリットといえるでしょう。またゲームは努力が結果に結びつきやすい点も、モチベーションの維持に大きな影響をもたらします。

次に考えられるのが、プロセスの管理や全体の把握といった大局的な視点を身に着けやすいことです。「シミュレーション」や「RPG」、「箱庭系サンドボックスゲーム」など、ゲームは基本的に現実世界を簡略化して、出来事と結果の因果関係や全体像を把握しやすいようにデフォルメしています。現実の世界では考慮すべき事柄が膨大なため、理由から結果を、結果から理由を把握することは一筋縄ではいきません。また、全体マップやアイテム・ステータス一覧などに代表されるような、攻略に必要な情報を一覧、把握できるシステム的な仕掛けも色々と用意されています。こうした利点を生かして、全体像を把握すること、これから成すべきことを整理する思考方法を学ぶことは、現実世界で俯瞰的な視点を持つためのよいトレーニングになるのです。

最後は、現実では不可能あるいは困難な体験ができることです。飛行機や車の操縦、外科手術、外交と戦争、電子回路の設計などゲームでは様々な体験を容易に、しかも安全かつ安価に繰り返し体験できます。現実そのままではありませんが、体験の取っ掛かりとしての価値は無視できません。また、学習には失敗から学ぶことも大切ですが、ゲームであればリスクなく失敗を経験できます。

このように、ゲームによって得られる利点は意外と多いのです。

<③教育現場で注目される『Minecraft』>

現在の教育現場におけるゲームの教材利用について考えたとき、もっとも注目度が高いのが『マインクラフト』です。皆さんもご存じの通り、『マインクラフト』はサンドボックスゲームに分類される超人気ゲーム。村人や動物、モンスターが生活する広大な世界を探索したり、素材を集めて建築をしたり、農業や牧畜を行ったりと自由な冒険や生活が楽しめるゲームです。

では、なぜ『マインクラフト』に注目が集まるのでしょうか?人気ゲームであるため、学習のモチベーションを保ちやすいことは言うまでもありませんが、それ以外にも本作ならではのメリットが複数存在します。

まず、できることが多い反面、決められた目標がなくプレイの自由度が高い点です。これは何をすればいいのか、何をしたいのかを自分で考え取り組む必要があることにつながるため、プレイヤーの自主性を養うことができます。さらにマルチプレイが可能なので、自主性に加えて仲間とのコミュニケーションや連携も重要になります。

次に、建築や伐採、植林、鉱石の採掘といった計画性を要求される要素が豊富なことです。建築を例に挙げるなら、「どのような建築物を作るのか」「必要な素材は何か」「どんな順番で建設すれば効率的か」といった作業のプロセスを考えることや、計画の通りに作業を進めるといった手順をこなし、試行錯誤を繰り返していくことが求められます。これらによって、計画の立案・遂行や、論理的に物事を考える力を養うことができるのです。また、様々な建築を行うことは、創造性や発想を養うことにもつながるでしょう。

そして見逃せないのが「レッドストーン回路」の存在でしょう。『マインクラフト』ではレッドストーン回路を作成することで各種ギミックを作り出すことができます。ここでは詳しい解説は省きますが、レッドストーンを利用して「OR回路」「NOT回路」「NOR回路」を組み合わせて複雑な動作を実現するのはコンピューターを始めとする電気回路やプログラミングそのものでもあります。レッドストーン回路を通して電気回路やプログラムの基礎知識を身に付けることができ、さらにプログラミングに必要な論理的思考も養うことができるのです。



<④まとめ>

ここまで、ゲームを使った学習とそのメリットなどについてザックリと解説してきました。

『マインクラフト』には『Minecraft: Education Edition』俗にいう教育版マインクラフトも存在しており、学校はもちろん、ヒューマンアカデミーの『こどもプログラミング教室』のように各種教育機関でも広く利用されています。ただし教育版は利用には企業・グループ向けのOfice360アカウントが必要なほか、1ユーザー当たり12ドルの年間ライセンス料が必要なため、個人での利用はあまり現実的ではありません。

教育版と通常の『マインクラフト』との違いですが、生徒の現在位置など行動を把握・管理できる「Classroomモード」や写真撮影とアルバム管理が行える「カメラ」や「ポートフォリオ」。学習内容に合わせた専用のワールド。『マインクラフト』内でプログラミング学習が行える「CodeBuilder」といった学習向けの機能が多数用意されています。

なお「CodeBuilder」に関してはWindows 10やWindows 11の『Microsoft Store』からダウンロードできる、統合版あるいはWindows 10版と呼ばれるストアアプリ版『マインクラフト』に『Code Connection for Minecraft』を併用することでも利用できますが、導入の難易度は高めとなっています。

また、今回は『マインクラフト』を中心に取り上げましたが、2023年には鉄道で日本中の駅を旅しつつ停車駅で物件を購入していく、すごろく風パーティゲームの定番『桃太郎電鉄』シリーズの教育現場向け作品『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』も登場しました。

『桃太郎電鉄』は、教育版の登場以前から、全国をゲームで巡ることで各地の地名や歴史、名産品に関する知識が得られるとの評価があります。こちらは教育機関であれば無償で利用可能で、すでに全国7000校以上での導入実績があります。

このように、これからも教育現場におけるゲームの活用は発展を続けていくことでしょう。未来の学生はどんなゲームで学習することになるのか、想像してみるのも楽しいかもしれませんね。

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