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2025. 08. 06
学園長コラム【学園長コラム vol.66】理系・文系
専攻分野を理系と文系に分ける、だけではなく理系人間や文系人間というように、
人間を二種類に分けてしまうのは日本独特の傾向・風習だと思いますが、私はこの考えに強く反対しています。
特にITの分野で活躍している人は、両方の強みを持っていると思います。
第一に、日本では高校で「二度と数式を見たくない」という人が入試科目に数学がない進路を選び文系と呼ばれ、
「古文や日本史のない世界に行きたい」という人が理系を選んでいるような気がしてなりません。
というか、これらを基準に理系人間と文系人間に分類しているのではないでしょうか。
私自身は高校時代、好きだった科目は数学、英語、世界史、倫理社会(公共とか哲学の方向)であり、
自分を理系あるいは文系と自覚したことがありません。
1979年に社会人となった私は、プログラマを目指し、プログラマになりました。
あたかも数学のように論理的に考えることが気に入り、やっぱり自分は理系なんだな、と当時は思いました。
ところが、自分の作ったプログラムが、誰のどういうことに役立っているのかを考えるのが面白くなり始め、
人間の行動や思考に強い関心を抱くようになったのです。これって文系っぽいと思いませんか?
プログラマの経験を経て、システム・エンジニアという立場でお客様、すなわちシステムの利用者あるいは
ユーザーと頻繁に接点を持つようになると、なぜお客様がそう考えるのかを想像する文系的なアプローチと、
どうしたらそれを効果的かつ効率的に実現できるかを考える理系的なアプローチの両方が面白くなりました。
このとき、人間を理系と文系に分類することはばかげていると考え始めたのです。
その後、小売業、卸売業、損害保険業、金融業、人材サービス業などのシステムを担当したとき、
「同業他社との競争に何で勝つか」「同業他社とは全く別格の存在になるにはどうしたらよいか」
「事業をゼロから育成する最もスピーディな方法は何か」などをお客様企業の戦略立案担当者と
一緒に考える役割を頂戴し、人生で最も「仕事が面白い」という時期を迎えます。
もちろん、理系・文系などの分類は無意味で、知っている限りの知識・経験を総動員し、
なおかつ想像力を駆使したものです。
話は変わりますが、古代ギリシャの有名な数学者ピタゴラス(ピタゴラスの定理で有名)は、
哲学者としても有名です。
同じく古代ギリシャ哲学の最高峰アリストテレスは自然科学全般、社会科学全般の両方で大きな功績を残しました。
やっぱり理系、文系の両方とも大事、というか、人間を理系と文系に二分してしまう考えはおかしいと言えませんか?
私は高校の時に出てきた三角関数の加法定理、sin(A+B)をsinA,sinB,cosA,cosBであらわす
あの公式(おぼえていますか?)、この定理はもうすぐ69歳になる私の人生で一度も使ったことがありません。
また、応仁の乱がいつどこで、どんな人たちが何をやったのか一秒も考えずに人生を過ごしてきました。
理系と文系の両方の素養、実力が大切だというものの、あらゆる知識が要求されるわけではありません。
要求されるのは知識ではなく、あることに立ち向かう姿勢であり、考え方です。
それは社会の役に立ちますか?
害を及ぼすようなことはありませんか?
費用やエネルギーがかかる割には効果が薄いということはありませんか?
使う人は楽しく、面白く、それを使うことができますか?
それは予想しない使い方をされても変な結果になりませんか?
同じことを実現する方法にもっと効率的なものはありませんか?
などなど、
この仕事で要求される考え方、姿勢などを理系・文系に分類してはいけません。
以上

<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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