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2022. 11. 07
学園長コラム【学園長コラム vol.56】PMより上の役割?
PMというのはプロジェクト・マネージャproject managerのことです。
コンピュータ、スマートフォン、通信網などを駆使して大きなシステムを作るとします。
この大仕事をプロジェクトと呼び、その責任者をPMと呼びます。
私が若い頃、つまり20世紀、ITの世界で「あこがれの役割」はPMでした。
しかし今は、「それより上の役割?」と呼ぶべき仕事があります。
他の世界から例を引きます。
このアプローチはアナロジーanalogyといいます。
辞書には「本来全く別のものを機能面から関連させること」などと表記されています。
例えば道路網。日本の、あるいはある都道府県の道路網、この安全性と効率性をより高めることを日夜、考えている人がいます。
道路工事や清掃、事故の後始末、事故原因の分析などは毎日休みなく続けられています。
それに加えて、交通事情を抜本的に改善するための大仕事を続けている場所もあります。
例えば国道と国道を立体交差にするなどは数年間をかけて行う大仕事中の大仕事でしょう。
この大仕事をプロジェクトと呼びます。
その仕事の「範囲」が定められ、その完成に至る「時間」や「予算」や「体制」を計画として事前にまとめ、その承認を得てから取りかかる大仕事です。
この責任者は相当な経験を積んだベテランです。
さて、このプロジェクト・マネージャと、日夜、道路網の安全性・効率性を追求している人を比べてみましょう。
道路の世界では後者は、国土交通大臣とか都道府県の交通課の課長とか、なんだか専門家ではないような印象を持ってしまうかもしれませんが、ITの世界では違います。
一般の事業会社ではCIO=Chief Information Officer、IT会社でCTO=Chief Technology Officerと呼ばれる役職です。
いま、ほとんどあらゆる業種・業態の企業であっても、コンピュータやインターネットなどの活用を考えないところはありません。
金融業や製造業だけでなく、小売業や運輸業などのサービス業、あるいは農業においてさえ、IT活用は必須です。
ITのIがInformation=情報を表すように、情報活用を専門に考え続ける役割がCIOです。
一方、IT企業あるいはITでビジネスを進めているネット企業などは、I=情報が重要なことは分かりきっていますから、最先端の技術活用を推進する役割を担うCTOが重要です。
CIOやCTOは情報活用、技術活用を常に考え続けています。
小さな改善や小さな問題解決の旗振りが日常の仕事ですが、ときに、大きな仕事、すなわちプロジェクトを組むことがあります。
このとき、CIOやCTOはPMになるのではなく、PMの上に立つのです。
大きなプロジェクトがあるからといって、日々の小さな仕事がなくなるわけではありません。これは道路網の改善と同じですね。
立体交差プロジェクトを進めているからといって、その間、事故がなくなるわけではありませんから。
私は最近、インドでネットビジネスを立ち上げる企業から声を掛けられ、その相談に乗っています。ここで優秀なインド人技術者に出会いました。
その人をCTOにすることを決め、その人と体制を議論しているところですが、CTOの下に、「Tech Leader」と「Interface Leader」と「Project Manager」の三人を置くことに合意しました。
Tech Leaderは最新の技術を追いかけながら、どの技術を採用すべきかにリーダーシップを発揮し、Interface Leaderはユーザーの使い勝手の良いインタフェースに責任を持ち、Project Managerが当初2年間をかけて作ると決めた大仕事の旗振りをします。
そしてCTOは、彼ら三名の上司の役割を担い、「同時に他のプロジェクトを立ち上げるべきか」とか「この次はいつ、どんなプロジェクトを計画すべきか」を常に、そして長期的に考え続けるのです。
CIOやCTOの出身はIT技術者であることがほとんどです。
つまり、プログラマやエンジニア、デザイナーなどの役割を経た将来、みなさんはCIOやCTOの役割を担う可能性がある、ということなのです。
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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