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2023. 05. 30
学園長コラム【学園長コラム vol.59】生成系AI
ChatGPT(チャットGPTと発音)という言葉を聞いたことがあると思います。
最近よく報道されています。米国のOpenAI社が開発、提供しているチャットボットです。
あるいは一般名詞として生成系AI(英語ではgenerative AI)という言葉もよく使われています。
AI人工知能はこれまで、分析が得意でした。
例えばショッピングモールなどの大型商業施設のあちこちにカメラを設置して来場客の写真を撮る。
大量の写真を教材にして学習し、来場客が「お一人様」か「カップル」か「家族」か「友達」かなどを判別する。
そしてどの曜日のどの時間帯にどのような来場客が多いかを分析し、ショッピングモールが企画するイベントなどの参考にする。
一方、いま注目されている生成系AIは、画像、文章、音楽、デザイン、プログラム・ソースコードなどを生成するものです。
大学の中には「AIが作成した論文を提出してはならない」といったルールを新たに設けたところがあるぐらいですから、
生成系AIは論文を作ることさえできてしまうというわけです。
実はこれまでAI人工知能の開発、活用あるいは発展に関して、日本はかなり遅れている国という位置づけでした。
先ほどのショッピングモールの例で考えてみればわかりますが、
日本人の多くは、あのように勝手に自分が撮影されることに強い抵抗を感じます。
また、人口減少フェーズに入った日本では、
ああいった投資が生み出す経済的価値は年々下がっていくと受け止められ、
なかなか積極的な投資に踏み切れません。
例えば、現在のAIならショッピングモールに入ってきた二人を「カップルだ」と判別するだけでなく、
その二人を特定し、施設内の各所をどの順番に回り、どの程度の時間を使い、
どこで買い物をしたかを追跡することさえむずかしくありません。
もちろん日本人なら嫌がる追跡システムですが、これを例えば中国でやったとしたらどう思いますか。
中国政府が自国のAI開発・競争力強化を推進しようと考えたら、国民に文句は言わせないのではないでしょうか。
AIに関係する特許件数は中国と米国が突出していて、日本などははるかに遅れてしまいました。
しかし生成系AIならどうでしょうか。
「自分を撮影して自分を材料にする」ことに強い抵抗があると思われる日本人ですが、
「自分が作れと命じた文章を、どれだけ自分が直すかを見てAIが学習する」
つまり、「自分のリアクションを学習材料にする」ことにまで強い抵抗を示すと思いますか?
みなさんならどう思いますか?
日本人は文章・言葉だけでなく、様々な製造物や部品やサービスの品質に強くこだわる人民です。
生成系AIが作り出したアウトプットのレベルに、なかなか満足しない可能性があります。
言い方を変えれば、日本人に鍛えられた生成系AIはかなり高いレベルのものを作り出していくようになるかもしれません。
みなさん、いま、若いうちに、AIの初歩だけでも学習しておきましょうね。
将来、必ず役に立ちますから。
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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