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2020. 01. 13
学園長コラム【学園長コラム vol.22】AIはこれから(2)
前回、「AIはこれから(1)」で述べたことは、以下の二つ:
1)人が行っている作業の機械による代替でAIが利用されている事例が既にある
2)これまで夢物語であったようなことをAIが実現する可能性がある
今から一つ事例を紹介するが、この事例は報道されていない。
また、この事例が世界のどこで実現しているかも、私は述べることができない。
著名な百貨店を想定して欲しい。多くの顧客が訪れる巨大な百貨店だ。
百貨店の売り場の大半は小さなブティックに分割されており、
百貨店はブティックの場所と面積に応じた賃貸料を収入としている。
たとえばルイ・ヴィトンは良い場所を広く占めているので、大金を家賃として百貨店に支払っているわけだ。
その百貨店は、すべての出入り口とエレベータ前、エスカレータ乗降口、
さらに各フロアの主要な箇所にカメラを設置し、1秒間に1枚の写真を撮影している。
撮影した写真の中、人物については顔の部分をボカし、個人が特定できないようにしている。
これによって、いつ、どこに人がいて、どちらの方向に向かっているかがわかる。
さらにAIを活用することで、一人・二人連れ・グループ・家族などに分類できるし、
人種・年齢層・服装による収入レベルさえある程度判定できる。
もちろん手荷物のうち、百貨店内で購入したと見えるものを発見することもできる。
このデータを分析することによって、どの曜日のどの時間帯に、
どこにどういった来客がどの程度の数だけいるのかが判明する。
各ブティックは、このデータを、各自が保有する売上データ等と比較分析することによって、
「品ぞろえをどうすべきか」「ウィンドウに展示する商品をどうすべきか」
「この場所でよいのか、違う場所への引っ越しを考えるべきか」などを考察することが可能となる。
つまり、マーケティングだ。
各ブティックは当然、このデータが欲しい。
百貨店はAIによる分析データを各ブティックに売ることができる。
ブティックによっては元となった画像データそのものを欲しがるところもあるので、
そこに対しては5秒間に1枚のデータに圧縮して相応の価格で売ることにした。
百貨店自身は、来客の流れを分析して、各フロア、各場所の家賃を見直している。
百貨店は、いかに多くの消費者を百貨店に呼び寄せるかを追求し、
広告宣伝やブティックの配置、キャンペーンの実施を計画する。
各ブティックは、百貨店に来た来客をいかに店の中に引き入れるか、
そして、今いる場所でよいかどうかを常に見直す。
もちろん引っ越しは百貨店の同意というか、むしろ、百貨店主導で行われるものだが。
AIを用いたこのシステムは極めて戦略的であり、他の百貨店等に知られたくないこともあって、
報道されることは今後もないだろう。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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