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2024. 08. 09
学園長コラム【学園長コラム vol.63】人工知能
新聞記事に人工知能(AI)の文字が載らない日はないと言えるほど、AIは注目を集め、期待もされています。
この記事を書いている本日(2024年7月)、新聞記事ではAI投資と呼ぶべきデータセンター建設計画が目白押しで、
千葉県には大型データセンターの建設案件が3件あり、その合計投資額は4兆円にも上るとのことです。
ここでちょっと視点を変えて、AI活用の日本の実力を諸外国と比較してみたいと思います。AIに限定せず、
これまでのITの進歩を振り返りながら、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、そしてAIの順に見ていきます。
コンピュータというハードウェアは1940年代にアメリカとイギリスでほぼ同時期に発明され、その後、アメリカの
メーカーが世界を席巻しました。その後、日本製のハードウェアも善戦を続けており、日本国内市場に限れば悪く
ありません。
しかし同時に、世界市場での評価となれば、大型機も中・小型機もスマホも日本製が存在感を示しているとは言い
にくいでしょう。
もちろん、部品に関しては強い分野がいくつもあり、日本の製造業が弱いとは言えませんが。
ソフトウェアについては、アメリカのマイクロソフト社などが提供する基本ソフトウェアや、企業向け基幹ソフト
ウェアでSAP社やオラクル社が世界規模で事業を展開しているのに比較すると、残念ながら世界に存在感を示して
いる日本発のソフトウェアはないと言わざるを得ません。
また、サービスについても、世界規模で活躍しているのはごく少数のアメリカ企業、Google社やMeta社(旧Faceb
ook社)などだけであり、ここに日本企業はいません。
ちょっと視点を変えて、IT活用で世界に存在感を示している企業は、セブンイレブンなどごく少数ではありますが、
ないわけではありません。
こう考えていくと、AI活用においても、日本が世界に存在感を示す可能性は小さいと感じるかもしれません。現時点
で報道されている事例を見ても、顧客対応を電話からインターネット経由に切り替えてAIに回答させるなど、どちら
かというと人件費削減目的が目立ちます。
顧客を撮影したり録音したりしてマーケティングに使うといった手法は、撮影・録音される側の日本人にとって反発
が強く、残念ながら当面、画期的な活用例は出てきそうにありません。
しかしながら、あきらめてはいけません。
日本企業の中には、これまでに重要なデータを蓄積し、顧客満足の向上や製品開発、マーケティングに活用して付加
価値を創出してきた企業があります。そのいくつかを私は直接知っています。
一例として、エンジニア人材の就職・転職・派遣を事業とする人材ビジネスの企業がありますが、企業が求めるエン
ジニアリング・スキルと個人が持つスキルをAI活用の上でマッチングしている企業があります。
この企業が持つスキル・データベースは数十万件に及ぶ個々のスキルを分類しており、日本やアメリカなどの標準化
団体が定義するスキル一覧をはるかにしのぐ精緻さを誇ります。
要求スキルと保有スキルのマッチング度合いをAIに採点させることは従来も可能でしたが、このマッチング度合いを、
自然言語を使ってわかりやすく説明することが、いま注目されている生成AIを用いることで可能になります。
日本企業あるいは日本人と言うべきかもしれませんが、細かく分類して精緻に管理し、そのうえで分析し、戦略策定
に生かす、この実力は諸外国に劣らないどころか、私は秀でているように思います。
この強みを生成AIで生かすことができれば、日本がAI活用分野で世界をリードすることも夢ではありません。
私はこう考えます。
以上
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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