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2019. 09. 30
学園長コラム【学園長コラム vol.7】業種とIT
産業界のいかなる業種も、いまやITと無関係ではいられません。
農業や水産業でもIT活用事例が報告されています。
しかし実はインターネット以前の時代はそうでもなくて、
コンピュータやネットワークを活用する度合いは業種によって
大きな差があり、その差は今でも業種間のIT利用格差として存在しています。
IT活用を積極的に進めることには理由があり、
その第一は取引データの量や種類が多いことがあげられます。
たとえばコンビニエンス・ストア。
大手なら国内2万店舗を超える規模であり、
各店舗に毎日1,000人の顧客があれば、
全店舗合計で2千万件の売上げデータが発生します。
多品種・少量で多店舗展開のコンビニはIT利用を
前提として1970年代に生まれた業種なのです。
逆に取引データが少ない代表例は不動産業。
IT活用は遅れて始まりました。
人生で不動産を何回も購入する人はまれですからね。
IT活用の理由のその2は、
コンテンツで差別化できない業種にあり、その代表例は証券会社です。
株式などは証券取引所で売買されるもので、証券会社は仲介を行います。
つまり、株式はどの証券会社経由でも売買できます。
もし手数料に差があれば簡単に勝敗が決まるので手数料は同額、
差別化は業務のスピードにかかってきます。
同じ買い注文なら早いほうが優先されますから。
日本最初の商用コンピュータ利用は1950年代の証券会社でした。
この逆、つまりコンテンツで差をつけるところ、
つまりオンリーワンの商品やサービスを提供する業種や
業態ではIT利用が遅れました。
高級な嗜好品の販売店、高級な宿泊施設や飲食業、
サービス業などのIT活用はインターネット以後です。
理由その3、計算業務が多くて間違いが許されないところ、
つまり銀行などのIT利用も早かった。
取引データも多く、金融は世界のIT推進を引っ張ってきました。
ところが同じ金融でも生命保険は取引データが少なく、銀行や証券に遅れをとっています。
理由その4、製造業の工場で省人化や自動化を進めたところは
コンピュータ利用が早く、機械・精密機械・化学・食品・薬品などの
製造現場は先進的です。
一方、同じく製造現場であても、「手作り」を付加価値とするところのIT利用は遅かった。
理由その5、社員が多く人件費がコストの大半を占めるところは、
その費用対効果からIT利用が早かった。
大手小売業や大手サービス業がこれにあたる。
ところが人件費のかたまりのような役所、
つまり公共分野はIT利用が遅れています。
人件費を減らす、つまり人を減らす考えが薄いからかもしれません。
業種や業態によってIT利用に差があったものの、インターネット以後は、
業種の差よりも個々の企業の差の方が顕著かもしれません。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ
【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事
【学園長コラム vol.3】世界を変えるためにやっている
【学園長コラム vol.4】異常終了 - アベンド -
【学園長コラム vol.5】天才ユーザー(アパレル)
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