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2019. 11. 11
学園長コラム【学園長コラム vol.13】天才ユーザー(コンビニ)月曜夜9時の少年ジャンプ
少年ジャンプは日本で最大発行部数を誇る週刊誌で、毎週月曜日に販売される。
熱烈なファンは日曜の夜、寝ないで待ち、明け方あるいは夜中、発売時刻にコンビニに走る。
小学生や中学生は月曜には速攻で帰宅し、小銭を持って向かう。
クラブ活動を終えた高校生は夕方、暇な大学生は時間帯が定まらない。
それでは月曜日の夜9時に少年ジャンプが売れているデータを見た人は、どういう人物像を描くだろうか。
残業などで遅くなったサラリーマン男子ではないか。
さて、残業などで遅くなったサラリーマンは帰宅途上のコンビニで少年ジャンプを買う際、
どういう状況にあるか、つまり、他に何を購入する可能性があるか。
飯も食わずに残業した人は弁当を買うだろう。お茶も買うかもしれない。
残業の途中で軽食をとった人は、缶ビールや缶チューハイとおつまみを買うかもしれない。
同僚と軽く居酒屋で一杯やった人は、炭酸飲料か。
顧客にレジで聞くわけにはいかないが、POSデータを分析すれば見えてくることがある。
POSとはPoint Of Salesの頭文字で販売時点がその直訳。
レジで買った・売った時点でのデータなので、いつ・どこで・何と何を同時に買った・売れたかがわかるデータだ。
このデータを単に合計金額表示とレシートを印刷するためだけに使っている企業がまだまだ多い中で、
このコンビニはPOS分析と称して、どういう顧客がどのような状況で来店しているのかという仮説を立てている。
もう何十年も前から。
日本最大というよりも世界最大で最強と言うべきセブンイレブン・ジャパンが
POS分析で仮説を立て、品揃えでそれを検証してきたというのは有名な話。
月曜夜9時の少年ジャンプについての仮説を立てているかどうかは、
彼らが具体的なことは企業秘密にしているので不明だが、私の読みでは間違いなくやっている。
もう10年以上前のことだったと思うが、NHKのニュースだったか特別番組だったかで、
厚生労働省が知りたいインフルエンザの流行経路を、セブンのヨーグルト飲料のPOS分析が言い当てたと報道されていた。
厚生労働省はインフルエンザ感染拡大防止のため、病院や診療所に患者が来たら、
それをファクシミリで当日か翌日に報告させ、それを打ち込んで感染経路を調べていた。
ところが、患者が病院へ行くのは重症になってからが多く、さらに、
その事実は48時間以上も後にようやく集計される遅い分析結果だ。
一方、インフルエンザ気味と感じた本人や家族がヨーグルト飲料を買う傾向があったらしいのだが、
セブンのPOS分析なら断然早い。
仮説構築のためにデータを見ていた分析官が気づいたもので、
こんなことを組織的に進めているのだから天才ユーザーと呼んでいいだろう。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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