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2022. 07. 06
学園長コラム【学園長コラム vol.53】なぜ中退?
つい最近、あるカナダ人から質問されました。
この人は日本でビジネス英語を教えている人で、IT関係の人ではありません。
しかし英語教育の現場でITを使いまくっている人ではあります。
「なぜ、ビル・ゲイツもスティーヴ・ジョブズも大学を中退したのでしょうか?」
私をIT人材と見て、質問してきたものです。
この二人が大学中退したことは有名な話で私も知っていましたが、
「なぜ?」という理由は聞いたことも読んだこともありませんでした。
ですから推測、想像してみました。
この二人は私より2学年ほど上ですが、ま、同世代ということになります。
つまり、私が学生だったとき、彼らも学生でした。
ビル・ゲイツは世界的に著名なハーバード大学でしたし、
スティーヴ・ジョブスは育ての親が「大学に行かせる」ことを条件に、
生みの親から赤ん坊のときに譲り受けたという経緯があり、彼もそのことを知っていたはずです。
なぜ、中退したのか、自らの意思で。
私が学生だったころ、
コンピュータは第二世代から第三世代へ変わりつつあるときであり、
大型コンピュータは格段にオシャレになり、
タイムシェアリングシステムと呼ばれる方法で、
学生達はそれ以前よりも遙かに気軽にコンピュータを使えるようになっていました。
同時に、マイコン(マイクロ・コンピュータ)と呼ばれる、ボード(板)にチップを着けて線でつなぎ、
自作の超小型コンピュータを作れるようにもなっていました。
私は学生時代、
コンピュータや情報科学・情報工学が専攻でなかったゆえに、横目で見ているだけでしたが、
同学年の何人もがコンピュータに「はまって」しまい、
朝から晩まで毎日、夢中になってプログラミングに没頭していました。
日本の大学は米国のそれに比較して授業料は安く、チェックは厳しくなく、
中退せずとも「好きなことをやりながら学生を続けられる」というある意味で好条件でした。
逆に言えば、勉強せずとも卒業できてしまうものでもありました。
しかし米国など海外の大学は違います。
専門科目の勉強以上に「のめりこんでしまう」ようなものがあれば
落第せずに学生を続けることはほとんど不可能です。
法学が専攻だったビル・ゲイツ、デザインが専攻だったスティーヴ・ジョブス、
この二人はコンピュータにのめりこんでしまい、
あっさりと大学を中退してしまったものだと私は推測します。
あの頃も今も技術革新のスピードはものすごく速く、
いったんのめりこんでしまうと他のことに注力する時間的余裕がなくなるだけでなく、
関心を持ちにくくなるようです。
今では世界中の若者の多くが、それも中には小学生ぐらいの子供であっても、
ITにのめりこんでしまっているという話をあちこちで聞きます。
この世界にのめり込んでしまう人たちにとっての最初のキッカケには
色々あるものと想像しますが、大多数はプログラミングです。
どのプログラムかはわかりません、人によるでしょう。
しかし必ずどこかの何かのプログラムできっかけをつかみ、面白さを実感し、
ついついのめり込んでしまうものです。
私自身は就職してからプログラミングを学びましたので、
今なら「遅いデビュー」かもしれませんが、
「コントロールブレイク」と呼ばれる手法を使ったプログラムをきっかけに「はまって」しまいました。
これは、整列された大量の入力データを順次入力、処理し、
小計や合計や総計を計算しながら出力するプログラムで、
プログラム行数=命令数を小さく抑えるシャレた方法でプログラミングすることに夢中になったものです。
いま学んでいるプログラムに「はまる」とは限りません。
しかし必ずいつかどこかで、それも遠くない将来、はまります。
さいわい、みなさんは中退する必要はありません。
むしろ在学することでいくらでものめり込むことができるのです。
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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