ニュース&トピックス
News
2019. 10. 21
学園長コラム【学園長コラム vol.10】Why don't you come to me?
西暦2000年頃の話です。
そのころ私はIT企業の企画担当をしていて、新規事業の起案や既存事業の改革案を考えていました。
今回のターゲットはガソリンスタンドの情報システムです。
日本にはガソリンスタンドが数万の単位であり、激しい競争を続けてきました。
自動車の燃費がよくなることと裏腹に、店をたたむスタンドが増えてきました。
スタンドには必ず大きな看板があります。
しかし実は個々のスタンドのほとんどは個別の小さな会社であり、
そこが看板の名称を持つ「元売り」と呼ばれる大手石油精製メーカーと契約しており、
そこからガソリンなどを仕入れているのです。
ガソリンスタンドのIT利用目的を考えてみてください。
売っているものはレギュラー、ハイオク、軽油と呼ぶ三つのガソリンが主であり、
冬場の灯油と事務所内にちょっとだけ置いてあるカー用品です。
IT利用で効果が出る条件の1つ、取引データの種類の多さとはほど遠く、
IT利用を進めるモチベーションは高まりません。
ガソリンを購入する顧客がクレジットカードで精算することがありますので、
そのオーソリゼーションと呼ぶ、信頼性確認と精算をネットワーク経由で行う必要はありますが、
オンライン処理の必要性はその程度です。
一方、元売りは万単位のスタンドと取引データの交換や確認を行うために
IT活用を進めたく考えていますが、1円でも安くガソリンを売りたいスタンドはIT経費負担を最小限に抑えたい。
スタンド向けならびにスタンドと元売りを結ぶ情報システムを提供していた私が属するIT企業は、
この事業の収益性に課題を感じていました。つまり、もうからない。
これは「構造的に儲からない」と考えた私は、
ITでもクルマ社会としても先進国の米国では
どんなIT事業者がどんな情報システムを
提供しているのか知りたくなり、インターネットで探しまくりました。
見つかったのは、なんと、たった一人でクルマ移動しながら
全米のスタンドを回っているITオヤジでした。
高性能のコンピュータと通信機器をクルマに乗せ、
カネと時間がもったいないときは「クルマで寝ている」という人だったのです。
この事実は、私が電子メールで
「あなたはいったいどこにいるのか、どこに行けば会えるのか」と
聞いたときに明かされた事実でした。
そしてすかさず、かれは言いました。
Why don’t you come to me?
疑問文ではありません。
「オレんとこに来いよ」というお誘いの文章です。
この直後に彼のいた近辺で銃撃事件が勃発し、
米国出張を延期していたら9.11の大事件があり、
ついに彼に会う機会を逃してしまったことがいまでも悔やまれます。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
▼バックナンバーはこちら▼
【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ
【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事
【学園長コラム vol.3】世界を変えるためにやっている
【学園長コラム vol.4】異常終了 - アベンド -
【学園長コラム vol.5】天才ユーザー(アパレル)
【学園長コラム vol.6】等比数列の和の公式
【学園長コラム vol.7】業種とIT
【学園長コラム vol.8】世界のIT
【学園長コラム vol.9】Win - Win - Win