ニュース&トピックス
News
2019. 08. 12
学園長コラム【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事
1979年、私が新入社員のときの話。つまり昔ばなしだ。ご容赦ください。
入社後の研修を経て配属された部署で、プロジェクトチームの一員となった。
コンビニエンス・ストアのシステムを新規開発するという。
今や店舗数2万を超え、日本を代表する企業というか、世界有数の小売業となったそのコンビニだが、そのときは店舗数で数百のレベル。
私が担当したのは「配送リスト」と呼ぶ、紙の書類を作成するプログラムだった。
当時の情報システムの出力は、ほとんどすべてが紙であり、その紙には数字と英字とカタカナしか印字できなかった。
漢字なし。もちろん黒インキのみでカラーなし。
配送リストと呼ぶ書類は、商品を積んだトラックが、指定通りに店舗を回り、各店舗に商品を納めていくときに使用するもので、店舗と商品をタテとヨコの表にしたようなものだった。
これに苦戦した。
紙の幅には制限があり、左から順に商品A、商品Bと印字していくのだが、12種類しか商品を印字できない。
その店舗に13以上の商品を納入するなら2行目を使う。しかし2行目には次の店舗を印字したいし。
エクセルのような表計算を想像してもらえればよいのだが、配送ルートには店舗が20ほど含まれており、1回の配送では可能性として最大限100種類ぐらいの商品を納入する。
表計算ソフトなら20×100の表になり、縦スクロールと横スクロールで、見たい場所が見えるはずだが、これを大きさ固定の紙に印字するのだからややこしい。
何日も頭を悩ませながら、やっとの思いで見やすい書類を作れたと思ったら、予想外のことが起きた。
いや、事前に予想しなければならなかったのだが、商品名を印字する際、カタカナ横書きで入っているデータを
紙には縦書きに印字して見やすくしようということだったが、たとえばチョコレートを縦書きにすると「-」がそのまま横棒になっていてコリャなんだ、ということになった。
つまり、「-」があればそれを「|」に変換する必要があったのだ。
これには苦労した。
やっとの思いで完成した配送リストが本番を迎え、たまたま会社の近くの店舗で商品を納入しているところを目撃できたときには感動した。トラックの運転手が配送リストを見ながら商品を納入している。同時に、店員が別な書類である発注控えを見ながらチェックしている。
そして、実は、商品在庫を管理している人が品切れを防ぐために使う別な書類もある。
人間が仕事をするためにコンピュータを使う。その仕組みを作る。これが私の初仕事だった。
──────
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
▼バックナンバーはこちら▼
【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ