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2019. 09. 16
学園長コラム【学園長コラム vol.6】等比数列の和の公式
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理系と文系という日本特有の分類があり、ITは理系の職業分野だと考えられていると想像します。
理系科目の代表は数学。
ゆえに「数学が苦手だからITは無理」と考える人も多いのではないでしょうか。
私の考えですが、「人生に数学は必要」ですが、ITゆえに「普通以上に必要」とは思いません。
人生には国語も社会も理科も体育も音楽も必要なように数学も必要。
数学だけが突出して重要であるとは考えていません。
今回の話は、ITの世界に40年在籍している私が経験した、
最も高度な数学は、高校2年で学習した「等比数列の和の公式」であった、というものです。
金融機関の債券ディーリング部門むけのシステムにおいて、
定期的に利息が入る有価証券の複利・利回りを計算する際に、等比数列の和の公式を使ったのです。
もちろん高等な数学が求められる分野もあります。
天才プログラマーと呼ばれる人たちは高度な数学を駆使しています。
たとえば大量データをその値の小さい順に並べるというプログラムを考える場合、
どの方法が最も効率的であるかを調べるために指数関数や対数関数を用いることがあります。
あるいは工場内の自動化を推進するシステムを設計するとき、必要な電力や適正な温度、圧力などを
計算するプログラムを作るとき、数学が必須となるでしょう。
一方で、私が経験してきた
金融、流通、公共や、サービス業あるいは製造業の収益管理などの分野では、
必要な数学はほとんどが四則演算、つまり足し算・引き算・かけ算・割り算で
十分であり、同時に、どういう法令に合致した情報管理をすべきか、
どの立場の人がいつ情報を把握して何を判断するかなど、
いわゆる文系分野の知識や洞察が求められました。
IT企業は人手不足が深刻ですから、採用の際に「文系でも大丈夫」
といった表現をする人事部の人が多いように想像しますが、
私は理系だから大丈夫とか、文系でも大丈夫という考え方に賛成しませんし、
そもそも理系と文系の分類にも反対です。
たとえば、通信回線の二重化を検討する際、稼働率が0.9である回線を
二重化した場合のシステム稼働率を求めよという問題に直面したとします。
つまり90%の確率で稼働している通信回線が二本あって、
そのどちらか一方さえ稼働していれば全体システムとしてはOKだとした場合の
確率はいかほどか、という問題です。
この問題を解くためには高校で学ぶ数学の
「集合」「場合の数」「ベン図」といった知識が役立ちます。
答えは99%の稼働率なのですが、1%のリスクがユーザー組織や人々、
あるいは社会に与える影響を考える必要があり、
それには数学ではなく心理学や社会学、あるいは常識や想像力が求められるのです。
理系だけ、文系だけの知識ではITの世界では活躍できません。
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ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
▼バックナンバーはこちら▼
【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ
【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事
【学園長コラム vol.3】世界を変えるためにやっている
【学園長コラム vol.4】異常終了 - アベンド -
【学園長コラム vol.5】天才ユーザー(アパレル)