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2025. 07. 07
学園長コラム【学園長コラム vol.65】ディジタル
モナ・リザという絵画がありますね。
レオナルド・ダ・ヴィンチが1503年から1506年ぐらいの間に制作したと言われています。
つまり500年以上も昔の美術品です。
あの表情は微笑であると言われていますが、なかなか複雑な表情ですよね。
そして、色、これもまた複雑なものばかりで、ズバリ「何色」と言えないようなものばかりです。
ここで一つ問題提起、現在、パリのルーブル美術館に展示されているあの作品の色、
ダ・ヴィンチが描いた500年前と同じ色だと思いますか?
あの作品の写真をどアップで見ると、絵の具が割れてひびだらけです。
ですから色も500年前と同じとは考えにくいのではないでしょうか。
さて、ここで別な問題提起。色の種類ってどのぐらいあるでしょうか。
「無限にある」というのが正解のような気もしますが、ちょっと深く考えてみましょう。
色は光を反射したものであり、「波」です。波長、すなわち波の長さが色の違いを生み出しています。
赤外線というのは人間の目では見えないほど長い波長のものですし、紫外線は逆に目に見えないほど短い波長のものです。
人間の目が見える範囲、すなわち可視光線の波長の長さは360~830ナノメートルということです。
この範囲の値は、小数点以下を無限に使っていけば無限にある、と言えます。
ですから色の種類は「無限にある」が正解と言えるかも知れません。
しかし絵の具はどうでしょうか。
絵の具を構成している粒子を、これ以上分割できないほど小さく分けて行けば、ある段階で止まります。
例えば赤の粒子が1万個、青の粒子が1万個を合わせた紫をほんのちょっとだけ赤を強くするために
赤の粒子を1万+1個に増やしたとします。
1万+0.1個とか、1万+0.00001個とか、粒子を無限に分割できれば色の種類は無限になりますが、
これ以上細分化できない粒子を考えていますから、それは無理なことです。
色の粒子がどういうものだか知りませんが、分子とか原子とかを考えれば、
それ以上細分化できない限界があることには間違いはありません。
つまり色の種類は無数にありますが、決して無限ではない。
たとえば色の種類を100万種類と仮定してみましょう。
100万は10の6乗、10⁶です。
人間は10進数で計算しますが、コンピュータは2進数で計算します。
これ、覚えておくと何かと便利ですが、2¹⁰=1,024。2²=4、2³=8と計算していけば
16,32,64,128,256,512,1024と倍々ゲームで増やしていけば簡単に計算できます。
この2¹⁰はITの世界では1k(1キロ)と呼ばれる値です。
およそ千ですから、ふだん使っている1kg(1000g)や1km(1000m)から連想できますね。
で、100万=1千×1千、あるいは10⁶=10³×10³ですから、同様に、
2¹⁰×2¹⁰=2²⁰=1m(1メガ)
ということで、色の種類が100万種類あるとすれば、20ビットあれば100万種類の
色を識別・管理することができます。
10進数なら6桁あれば100万種類を区別できるように、2進数なら20桁=20ビットあればよいということです。
なお、視神経が100万種類もの色を識別できるとも考えにくいので実際はもっと小さな数字で
考えても良さそうですが、ま、これで行きましょう。
さて、モナ・リザの絵画を100万の点から構成されると考えてみましょう。
1枚の絵を100万に分割すると考えても構いません。
つまり様々色のついた点を100万個、縦横にくっつけて1枚の絵にするということです。できますよね。
100万の点は、これも20ビットあれば区別できます。個々の点を20ビットで表し、その色を20ビットで表す。
つまり、モナ・リザの絵画は40ビットのコードを点の数=100万揃えれば再現可能となります。
別な表現では、40メガビットの記憶容量があればモナ・リザを正確に記憶できる。
1千年後でも1億年後でも、ディジタルなら正確に記憶でき、正確に再現することが可能となるのです。
私が就職してこの世界に入ったのは1979年、だいぶ昔です。
そのとき、ディジタルという言葉を今のように使うことはありませんでした。
コンピュータ(computer)は計算する(compute)機械であり、数値計算することから出発し、
せいぜいアルファベットやカナ文字を記憶・編集できる程度でした。
あのとき全く想像すらできなかった、絵画や音楽、動画などを記憶・編集・作成できるのがディジタルの世界です。
そしていまあなたは、このディジタルの世界のプロを目指しているのです。
以上

<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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