ニュース&トピックス
News
2019. 08. 26
学園長コラム【学園長コラム vol.3】世界を変えるためにやっている
西暦2000年、米国シカゴで開催された電子商取引シンポジウムに参加したときの話です。
インターネットはWindows98とともに世界中に広まったとを覚えておくと、インターネット普及は1998年前後のことだと覚えやすい。西暦2000年はインターネットを活用した電子商取引e-commerceが広まる兆しを見せていた頃であり、小さな成功例が米国で注目されていた。
この頃、まだGoogleやAmazonは巨大な存在ではなかった。
シカゴで開催された電子商取引シンポジウムは、米国の小さな成功事例、あるいは挑戦中の事例を当事者が発表するというもので、それを聞くために世界中から人々が集まった。私が参加したセッションは、60名ぐらいの聴衆が入れる小さな教室タイプの部屋で、前の方で発表者がマイクなしで話すというもの。
聴衆を見渡すと人種が様々。肌の色も様々だが、服装から中東イスラム系とわかる人、ターバンを巻いた人、メキシコのようなブラジルのような派手な服装などなど。日本人は私一人だけだったと感じた。
当時の日本では「ビジネスモデル」という言葉が大流行していた。B2BとかB2Cとか。企業=businessと企業を結ぶ、B-to-BをシャレてB2Bと表記した。企業と消費者=consumerを結ぶのがB-to-Cなので発音が同じなB2Cとしたわけだ。
日本人は「形から入る」のが好きなようで、新聞・雑誌・テレビでこういった言葉が毎日報道されていたものだ。
セッションでは聴衆が積極的に質問を投げかける。日本から私ひとり、日本代表として質問してやろうと考えた私は、「そのモデルはB2B2Cですか?」と聞いた。この質問を受けた発表者は5秒間の沈黙の後、真っ赤な顔をして怒った早口で私を指さしながらまくしたてた。
「モデルが何だって? 何を言っているんだ! モデルなんていうのは、評論家が事後的に事例を分類するために作ったものであり、どのモデルなら成功するとかいうものではない。おれたちは世界を変えるためにやっているんだ。いまの世の中で不便なことに対してネットを使ってガラリと変えることができるんじゃないかと考えているんだ。いったいおまえは何しに来たんだ。おまえは評論家か?」
私はしばし絶句し、猛烈に反省しました。
世界を変えるためにやっている。
ITは世界を変えることができる最高のツールなのだ。どの形をまねれば金儲けができるか、そんな不純な動機では絶対に成功しない。私はののしられて恥ずかしかったが、なにかすがすがしい気持ちにもなった。
──────
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
▼バックナンバーはこちら▼
【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ
【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事