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2024. 05. 20
学園長コラム【学園長コラム vol.62】Amazon社の物流拠点を見学しました
2024年4月、川崎市にあるAmazon社の物流拠点を見学させていただきました。
ITをフル活用した先進的なシステムに驚き、感動すらおぼえたので、ここにみなさんに報告します。
同社の物流拠点は日本国内にこの時点で25あるということです。
ここには我々消費者からの注文があるだろうと推測した多くの商品が製造業者等から搬入され、在庫として管理され、
注文が来たら即座にピックアップして配送されるという流れが実現されています。
実はわたくし個人として見学の事前に知りたかったことの一つに、
消費者からの未来の受注をどのように予測しているのかがありましたが、
残念ながらそれについては人工知能を使っているといった表現にとどまり、
それ以上の詳しい話は聞けませんでした。
私自身、同社のウェブサイトでよく買い物をするのですが、翌日納品など納期が早く、
物流拠点にその商品があったのだと推測できます。
一方、数日後に「メーカー直送」で到着するものは、物流拠点にはなかったのでしょう。
さて、受注予測に基づいた商品が次々に搬入されてきます。
それを倉庫に格納するのですが、これが驚きのシーンを見せてくれました。
1メートル四方の正方形が断面積であり、
これが2メートル弱の高さを持った直方体が言わば「倉庫」となるのですが、
この倉庫、どういう商品はどの場所のどの倉庫に納めるといった法則性がなく、
来たものを次々に来た倉庫に作業員が入れていくのです。
倉庫は自走式で「来る」のです。商品もベルトコンベヤーの上をやってきます。
商品を取り出しバーコードをリーダーに読ませ、
透明ビニールで覆われた箪笥のような倉庫の空いている場所に入れます。
商品はバーコードを読ませたことにより、「何であるか」が管理でき、
自走する倉庫はシステムによって管理されながら「どの倉庫に格納されたか」の識別を可能とし、
さらに上方にあるカメラと人工知能が、作業員が倉庫のどの段のどこに入れたかを記録します。
これにより、ある商品が、どの自走式倉庫のどの面のどの段のどこに格納されたかを管理しているというわけです。
一方、消費者からの受注を受けて商品の発送を準備する作業場所も見ごたえがありました。
注文により指定された商品を格納している倉庫が自走してやってきて、
商品が入っている面を向けて止まります。
そこから商品を抜き出し、バーコードを読ませ、いったん棚に置きます。
注文を受けた全部の商品が揃ったかどうかをシステムが管理しており、
揃ったら次の作業場所である梱包のためのエリアに流れて行きます。
とにかくすべてが「ものすごく速い」「無駄がない」「効率的」という印象であり
、感心すると同時に、ITの力を十二分に使っているなと実感した次第です。
Amazon社は、ITのユーザーとして世界最大・最高レベルの存在です。
彼らはITでサービスを提供する立場であるITベンダーではなく、ユーザーとして能力を高めてきました。
そして、その技術力と、世界中にあるコンピュータ設備を活用してITベンダーとしてもサービスを提供しており、
AWS、つまりAmazon Web Serviceという名前で世界中でユーザー顧客を獲得しています。
ITユーザーが実力を蓄積し、ITベンダーをも兼ねたという事例です。
ちなみに日本でも、1950年代とコンピュータ利用が早かった証券会社や銀行が子会社としてIT企業を生み、
ITユーザーがITベンダーを生んだ、という事実があります。
著名なところでは野村證券の子会社として生まれた野村総合研究所や、
三菱グループ各社が作った三菱総合研究所などがこれにあたります。
ITの実力を蓄積しつつある皆さんは、ITベンダーに入っても、ITユーザーに入社しても、
その実力を存分に発揮できることに間違いはありません。
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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