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2023. 07. 03
学園長コラム【学園長コラム vol.60】技術力を生かす道
技術力を生かす道が広がっているという話です。
新聞記事に次の様なものがありました。
アメリカの議会に提出する法案に、通信会社への一部規制を緩和するというものがありました。
法案を作った委員会が、国民の意見を聞くためにパブリック・コメントを集めるという手法で、
インターネット経由で意見を集めたのです。
すると、ある大学生が法案に反対するために、メールアドレスを大量発行するサービスや、
でたらめな氏名・住所を生成できるウェブサイトを使い、ひとりで770万件もの反対意見を送りつけたのです。
これだけではありません。
法案に賛成する通信会社の方も、大金を使って850万件ものこちらは賛成意見を投稿させていたのです。
パブリック・コメントは全件で2200万件集まったそうですが、
なんと80%以上が偽投稿だったという笑えない事件でした。
IT分野の技術力は一般的に、情報システムや情報ネットワークを構築するために利用されます。
IT技術者は、何かを「作る」あるいは「創る」ために仕事をしている人がほとんどです。
ところがごく一部ではありますが、「壊す」あるいは「盗む」などに技術力を使っている犯罪者もいます。
大企業などのサイトから侵入して中にある重要データを暗号化、すなわち壊し、
身代金を払えば元に戻してやるという犯罪、ランサム・ウェアと呼ばれているものが目立ち始めました。
あるいは侵入して大量の個人情報などを盗み出し、名簿屋と呼ばれる別な犯罪者に転売するような者もいます。
私が言いたいことは、技術力を犯罪に使え、ではもちろんありません。
犯罪防止に使え、です。
最初の事例では、偽投稿をするために技術力を使うのではなく、
それを見破るために技術力を使おうということです。
いま、一定以上の規模の企業や団体のほとんどがインターネットを活用しています。
つまり、ほとんどの大組織が、ITを悪用する犯罪者にとってのターゲットとなっています。
従って、ほとんどの大組織は、IT守備力とでも呼ぶべき力の強化が課題となっているのです。
これまでのITに絡んだ犯罪の多くは、被害者のサイトやネットワークに侵入することが引き金となっており、
すなわちコンピュータ・ウィルスの高度化・複雑化が背景にあります。
これに加えて、今後、AI人工知能がキーとなって起こる犯罪が増えてくるはずです。
例えば、AIで映像や音声を精巧に偽造する「ディープフェイク」と呼ばれる技術を悪用して、
悪事を働く者がきっと出てきます。
これに対しても、AIの虚飾を見破るのはAIであると言われているように、
犯罪に使われる技術に対抗できる高度な技術力が求められます。
自動車を作るための技術力が、自動車を壊すために使われることはまずないと言っていいでしょう。
自動車を作るだけの技術力があるならば、壊すよりも作った方が儲かることは明らかです。
しかしながらITは、高度な技術力を持った犯罪者が大もうけできる可能性があります。
ですからこれに対抗するためには、ITで何かを作る人に加えて、ITでそれらを守る人も必要となるのです。
技術力を生かす道が広がっている理由がそこにあります。
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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