ニュース&トピックス
News
2022. 08. 29
学園長コラム【学園長コラム vol.55】就職事情が示す社会の変化
私が就職活動をしたのは44年前、1978年です。
1979年4月にIT企業の社員となりました。
私はいわゆる理系でした。
この当時、理系といえどもコンピュータが大学内にある大学と、ない大学があり、
私の大学は大型コンピュータが1台だけありました。
私は在学中にコンピュータを使うどころか、触る・見ることすらできませんでした。
理系の仲間の多くは製造業に就職しました。
このとき私は「ソフトウェア」をキーワードに就職先を探し、「情報処理」という事業を営んでいる企業を選びました。
当時まだ、ITという言葉は使われていなかったのです。
私が家族、友人、学生仲間たちに就職先のことを説明しても、みな「?」という表情を浮かべたことを覚えています。
あれから44年経ちましたが、
ITをキーワードに就職先を探し、その企業のことを親に説明してみたらどうなると思いますか?
私の父親は1920年代の生まれでしたから、
コンピュータやソフトウェアについて何も知らないことに不思議はありませんでしたが、
いま、若いみなさんの親は1980年代前後の生まれだと想像しますから、
インターネットを使いながら育った世代ではないでしょうか?
それでも、いま、最新のITを活用して何かをやろうとしている企業のことを説明されたとして、
みなさんの親世代はついてこれるものでしょうか?
それほどまでにITの進化スピードは速いのです。
前回のこのコラムで「DX事例」として紹介したスポーツジムに例えば就職したとします。
そこでは無人のジムに設置されたカメラが場内を撮影しており、AI人工知能が「異変」を検知します。
異変とは、利用者のケガ、危険な利用方法をしているなどの事故や危険、
利用者同士間の争いその他、あるいは施設の不正利用などの事件を指します。
AIがこれらの異変を検出・判断しますが、その判断が適正かどうかは人間がチェックしますし、
判断基準を変えねばならないとすれば、AIにアクセスする必要が出てきます。ITの仕事です。
この仕事、親世代に説明するのは容易ではないと思います。
例えばコンビニに就職したとします。
コンビニでアルバイトしたことがある人は多いと思います。
品出しやレジ、店内清掃などを担当したものと想像しますが、発注をやらせてもらえた人もいるかもしれません。
たとえば毎日発注している「生クリーム入りのどらやき」は今日、何個発注すべきでしょうか。
昨日と同じ6個で良いでしょうか。昨日とは曜日が違いますし、天候・気温なども違います。
さらに、そもそも昨日は6個が適切だったのでしょうか。
午前11時に納品されるまで、棚が品切れ=在庫ゼロ状態だったかもしれませんし、
それが長く続いてはいなかったでしょうか。
アルバイトの人はこんなことまで考えないかも知れませんが、正社員なら話は別です。
コンビニの本部に所属し、店舗指導や商品開発などを担当する部署に配属されれば、様々なことを考えねばなりません。
例えば、各店舗が発注個数を決断するための情報として、
「前日発注個数」「曜日別発注個数」「天候と売れ行きの分析グラフ」「在庫数の時間推移」などの情報をわかりやすく店舗端末に表示できねばなりません。すべてITの力を使います。
さらに、他のスィーツとの関連売上げ分析など、切りがありません。
コンビニは、本部と店舗が「いかに考えて運営・経営していくが」が差別化要因であり、それを支える武器がITなのです。
もしコンビニに就職が決まったとして、こういった背景を親世代に理解してもらうこと、容易ではないかもしれませんね。
つまりこれほど速く、社会は、特にIT活用している側面は変化しているのです。
本日の二つの事例はいずれもITを活用している事業会社のものですが、もちろん、彼らを支えるIT企業があります。
みなさんの就職先がIT企業であっても、IT利用企業であっても、ITをフル活用することには間違いがなさそうです。
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
▼バックナンバーはこちら▼
【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ
【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事
【学園長コラム vol.3】世界を変えるためにやっている
【学園長コラム vol.4】異常終了 - アベンド -
【学園長コラム vol.5】天才ユーザー(アパレル)
【学園長コラム vol.6】等比数列の和の公式
【学園長コラム vol.7】業種とIT
【学園長コラム vol.8】世界のIT
【学園長コラム vol.9】Win - Win - Win
【学園長コラム vol.10】Why don't you come to me?
【学園長コラム vol.11】経済産業省が鳴らす警鐘
【学園長コラム vol.12】AIとIoT
【学園長コラム vol.13】天才ユーザー(コンビニ)月曜夜9時の少年ジャンプ
【学園長コラム vol.14】天才ユーザー(百貨店)
【学園長コラム vol.15】メガ、ギガ、テラ
【学園長コラム vol.16】バッチ処理
【学園長コラム vol.17】恐怖の無限ループ
【学園長コラム vol.18】金持ちを目指せ
【学園長コラム vol.19】英語
【学園長コラム vol.20】ビル・ゲイツとの出会い
【学園長コラム vol.21】AIはこれから(1)
【学園長コラム vol.22】AIはこれから(2)
【学園長コラム vol.23】AIはこれから(3)
【学園長コラム vol.24】AIはこれから(4)
【学園長コラム vol.25】AIはこれから(5)
【学園長コラム vol.26】ニッチ(niche)
【学園長コラム vol.27】理系? 文系?それとも?
【学園長コラム vol.28】5G(ファイヴ・ジー)
【学園長コラム vol.29】4G(フォージー)と5G(ファイブ・ジー)
【学園長コラム vol.30】30歳になったときを想像してみる
【学園長コラム vol.31】倍々ゲーム
【学園長コラム vol.32】多様性
【学園長コラム vol.33】リモート・ワーク
【学園長コラム vol.34】台湾留学人気の理由
【学園長コラム vol.35】コミュニケーション能力
【学園長コラム vol.36】新・新型コロナ?
【学園長コラム vol.37】IT業界の景気は?
【学園長コラム vol.38】Society 5.0
【学園長コラム vol.39】変身
【学園長コラム vol.40】誰のためのプログラムか
【学園長コラム vol.41】IT活用のセンス
【学園長コラム vol.42】データの一元管理
【学園長コラム vol.43】広がる可能性
【学園長コラム vol.44】頭の体操
【学園長コラム vol.45】頭の体操(2)
【学園長コラム vol.46】新入社員のときのプログラム
【学園長コラム vol.47】IT利用の面白さ
【学園長コラム vol.48】2022年、世界の動き
【学園長コラム vol.49】口下手でいい
【学園長コラム vol.50】仕事が速い=仕事ができる
【学園長コラム vol.51】個性、努力、経験(勇気)
【学園長コラム vol.52】英語とプログラミング言語
【学園長コラム vol.53】なぜ中退?
【学園長コラム vol.54】DX事例?