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2020. 02. 10
学園長コラム【学園長コラム vol.26】ニッチ(niche)
当学園はAIとIoTに注力しています。
ある人物がこれを聞いて「ニッチだ」と言いました。
今回はそれに対する反論です。
ニッチと言う言葉は経済学、生物学、そして建築・文化の分野でそれぞれ異なる使い方がされています。
新聞や雑誌などでよく見かけるニッチあるいはニッチ市場は、すきま市場とも呼ばれる経済用語です。
例えば、麺類を主にする外食市場では、ラーメン、そば、うどんの三つが主流です。
もしここに、そうめんを専門にした外食店を開いたとすれば、それは「ニッチをねらった」と言われます。
生物学の例はたとえばコアラ。
ユーカリの葉は毒性が強く、他の草食動物等は食べません。
だからこそ、動作が緩慢でかつ争いに強いとは言えないコアラでもほぼ独占できる。
ユーカリの木が集まるオーストラリアの森にコアラが生息できるニッチが存在する。
この言葉の語源は実は建築や文化の用語です。
例えば中世以降のキリスト教会などを想定してください。
礼拝堂の中には大きな壁画や天井画あるいは正面にある大きな像がその象徴として飾られていますが、
壁のある部分がへこんでいて、そこに小さな像や絵画が飾られていることがあります。
その小さな世界だけはその作品が占めている。そこをニッチと呼びます。
「AIやIoTはニッチだ」と言った人は実は日本のソフトウェアの世界のベテランです。
私が反論するまでもなく、世界中の技術者や経営者はいま、AIとIoTが主流の技術になりつつあることを知っています。
問題は、日本人IT技術者の多くが、これらを経験しておらず、20世紀型の仕事をいまだに中心としていることにあります。
日本のソフトウェア会社の技術者の多くが、AIやIoTと無縁の仕事に忙殺されているのです。
つまり彼らにとって、自分たちのほとんどが担当していない新技術が
「すきま市場」に対応しているように感じているのだと推察します。
その理由は、特にこの分野で日本が遅れているからです。
たとえばクルマの自動運転は、米国、中国、欧州各国だけでなく日本でも進んでいますが、
一般道を使った試験走行が規制で許されない日本では、ごく少数のIT技術者しかこの仕事を担当していません。
また、たとえば人物の顔から本人を特定する技術力は日本が世界一ですが、
防犯目的以外にこの技術を使うことに日本人の多くは抵抗がありますから、なかなか実用化されません。
つまり、この仕事も滅多にない。こういった理由で、日本では、AIやIoTを駆使して
新システムを作っているIT技術者は極めて少数であり、他の大多数から見れば、
それらがニッチのように見えるのでしょう。
しかし、日本はいつも先進国を後から追いかけてきました。
従いまして、今回もまた、新技術の効果が世界中で認められたとき、
日本中が大騒ぎになり、AIやIoTを習得した技術者を探すのです。それはすぐ先の未来です。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、
現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、
IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。
「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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