ニュース&トピックス
News
2020. 01. 27
学園長コラム【学園長コラム vol.24】AIはこれから(4)
今回は、AIがインターネットのように広く普及する可能性について考察する。
最初に、インターネットがこれほどまで広く普及した理由を考えてみたい。
その第一のヒントはインターネット以前との比較にある。
インターネット以前にもコンピュータは大量のデータを保持し、
ネットワークを介して国境を越えたデータ通信が実現していた。
しかしこのとき、「コンピュータは正しい事実」を管理するものという言外の前提があった。
商品の売上、在庫、仕入れ、社員の勤務実績、基本給、評価査定、各通貨の為替レート、金利、株価など、
いずれも「正しい事実」であって、それらのどれかが間違っているとトラブルと認識されていた。
もちろんこれは今でも同じで、正しくあるべきものが間違っていれば利用者や利用組織は
早急な回復・改善に努めている。
ところがインターネット以後、これらに加えて、「事実ではないこと」も大量にコンピュータ上で作成され、
ネットワークを通じて世界中を駆け巡るようになった。
たとえば、通販サイト上での購入者の感想、SNSにおける意見、ツイッター上のつぶやき、
真偽が怪しい宣伝紹介サイトや、自画自賛型のサイトや投稿、そしてさらに偽装サイトやデマ情報。
これらの情報はいずれも人間が発しているという共通点がある。
今後、これらに加えて「モノが発する情報」があふれるだろう。
つまり、カメラ映像や集音機による音、気候、重量あるいは何かの異変についてのアラーム等。
IoTと呼ぶ、モノのインターネット、Internet of Thingsがいま急速に普及しつつあるが、
人ではなくモノさえもがネットワーク上に情報を流し込む。
しかしこれらの情報はあまりにも多く、また、何でもないときでも発してしまうので、
これらの情報を分析し、吟味した上で人間が見たくなるような情報に加工する必要がある。
それを実現するのがAIだ。
第二のヒントは、インターネット以前、コンピュータやネットワークの使い方は、
それに対して責任をもって統括する組織の存在が前提だった。
つまり、情報システムにはそれぞれの「範囲」が厳密に定義され、その範囲内の「責任者」が明確だった。
ところがインターネットはそうではない。
面白いと感じたサイトには参加者がかなり自由に参加できるし、飽きたら抜け出せる。
参加者が増えれば増えるほど面白みが増し、さらに参加者を呼び寄せる。
だから、小さく生まれたものが大きくなることがよくある。
最初に何かを始める人は手間もコストも時間もかける必要があり、言わば投資することになる。
しかしこれが広く普及すれば、けた違いのメリットを享受することさえできる。
だから次々に新しいものが生まれ、急拡大するものと消えていくものが頻繁に入れ替わる。
IoTで生み出されたデータがAIで分析、吟味され、ネット上で広がれば、恐らく同じことが起きるだろう。
面白い情報には人間が飛びつき、さらなるつながりが生まれる。
そして将来、AIが他の分析結果を面白いと判断し、それとつなぐことによって、
けた違いの広がりを実現する可能性がある。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
▼バックナンバーはこちら▼
【学園長コラム vol.1】毎日の仕事はITだらけ
【学園長コラム vol.2】プログラミングの初仕事
【学園長コラム vol.3】世界を変えるためにやっている
【学園長コラム vol.4】異常終了 - アベンド -
【学園長コラム vol.5】天才ユーザー(アパレル)
【学園長コラム vol.6】等比数列の和の公式
【学園長コラム vol.7】業種とIT
【学園長コラム vol.8】世界のIT
【学園長コラム vol.9】Win - Win - Win
【学園長コラム vol.10】Why don't you come to me?
【学園長コラム vol.11】経済産業省が鳴らす警鐘
【学園長コラム vol.12】AIとIoT
【学園長コラム vol.13】天才ユーザー(コンビニ)月曜夜9時の少年ジャンプ
【学園長コラム vol.14】天才ユーザー(百貨店)
【学園長コラム vol.15】メガ、ギガ、テラ
【学園長コラム vol.16】バッチ処理
【学園長コラム vol.17】恐怖の無限ループ
【学園長コラム vol.18】金持ちを目指せ
【学園長コラム vol.19】英語
【学園長コラム vol.20】ビル・ゲイツとの出会い
【学園長コラム vol.21】AIはこれから(1)
【学園長コラム vol.22】AIはこれから(2)
【学園長コラム vol.23】AIはこれから(3)