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2019. 12. 23
学園長コラム【学園長コラム vol.19】英語
新入社員として入社した私が、多くの先輩が口にする次の言葉に疑問を持つようになった。
「おれは、英語はダメ」。
なぜだろう。なぜ、このセリフを多くの人が言うのだろうか。
考えられる理由はいくつかあった。
第一に、「英語はダメだけど、他はいい、むしろ英語だけができない」という自己弁護。
第二に、「英語ができればもっといいんだけど」という希望、
ただしだからといって英語を勉強するわけではないという、やはり自己弁護。
第三に、「英語だけはアイツに任せておけばよい、おれは現場を担当する」という、やっぱり自己弁護。
数年経って、あのセリフにはこれらすべての意味が込められていることに気がついた。
技術はほとんどすべてが米国産。専門用語は英語か、あるいはそれを翻訳したもの。
コンピュータ利用の先進事例もほとんどすべてが米国生まれ。
あの時代に日本語の文献はまれで、ほとんどが英語のビジネス雑誌そのものしかない。
だから本当は英語ができればいいのだけれど、そんな勉強をしている暇はない、と言いたかったのかもしれない。
私は40歳を過ぎたころ、初めてインドへ渡った。
1990年代のインドはIT先進国になるべく猛スピードで邁進していた。
私の知人のインドIT企業の社長が私に言った。
「インドで英語ができるのは人口の2%だ」と。
え?
インド人口10億人のうち、たったの2%。
母国語は英語ではなくヒンディと呼ぶ別な言語。
私は驚いた。しかし彼は続けて言った。
「心配無用、佐藤さんが仕事のために話しかける相手は全員が英語を話せる」と。
翌日、彼の会社を訪問し、そこで若手社員たちと会話を持つ機会があった。
彼らは専門学校を出たばかりであり、みな20歳前後だった。
日本で言えば高校を卒業してすぐといった若者たちだ。
彼らの英語のレベルは日本の高校生なみだった。
しかし、なんとか私とコミュニケーションを取ろうとして
みなが競うように私に話しかけてくる。下手な英語で。
インドでは、ITの世界で生きていくなら英語が必須である、ということの証拠だった。
その後、世界のIT人材と知り合う機会を持った私は、ある法則に気がついた。
ITをやりながらも「おれは、英語はダメ」と言っているのは日本人、韓国人、中国人だけだと。
ベトナム人もミャンマー人もマレーシア人も、英語が嫌いなフランス人も、みな、ITの話は英語を使う。
英語を使おうとしない人は「英語が使える世界」と「使えない世界」の違いに一生、気づかない。
そういう人に英語の必要性を説いても無駄だという法則も私は発見した。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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