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2019. 11. 04
学園長コラム【学園長コラム vol.12】AIとIoT
21世紀前半の新技術の二大潮流はAIとIoTだと言われています。
AIはArtificial Intelligenceの頭文字をとったもので、人工知能と翻訳される。
IoTはInternet of Thingsの頭文字で特に定番の訳語はない。意味はモノのインターネット。
以下は私の個人的見解です。
IoTでは世界の先頭を走る可能性のある日本だが、AIではだいぶ後ろを走ることになる。
そしてその理由は、日本の歴史と文化、社会など、つまりITの実力以外の要素が大きく関係する。
IoTはモノとモノをインターネット経由で、あたかも人と人が会話するごとく、
モノ同士が情報交換し、意味のある動きを自動的かつ効率的に行う。
インターネット以前にも工場内では機械と機械が域内に閉じたネットワーク上で情報交換をし、
自動的かつ効率的な生産を実現していた。
日本の製造現場は世界最高水準であり、この方法で既に先頭にいた。
インターネットを使うことでいま革新が起きつつあるが、それは、工場などの域内に閉じた空間ではなく、
広くどこにでもつなげることができ、そしてそれが大変に安価で容易に実現できることに意味がある。
たとえばショッピングモール内のカメラやセンサーが捉えた人の動きによって冷暖房の強弱を調整したり、
駐車場の混雑度合いをモール外の路上の電光掲示板に表示することは容易だ。
このように、機械と機械をインターネット経由で情報交換させるIoTはそもそも機械に強い日本の得意分野だろう。
いまAIに巨額の投資が行われているのが米国と中国だ。
米国での理由はAIが儲かるから、中国での理由はこれで米国に勝てれば21世紀の世界の勢力図が大きく変わるから。
たとえばショッピングモールのカメラ映像をAIに分析させれば、どういう人がいつ来て、モール内をどう動くかを把握できる。
家族、夫婦、カップル、友人など様々な人間関係を、その動作や顔の表情から読み取ることが可能になってきた。
画像分析の技術も向上しているので、先週の画像の人と今日の画像の人が同一人物であることをAIは高い確率で当てるだろう。
つまりAIはマーケティングの強力な武器になる。
だからカネが動く。
経済規模が大きく、マーケティング効果が期待できる米国ではAI開発・AI利用に投資する企業、個人が数多い。
中国はこのことに気づいている。
しかし日本人は、ショッピングモールで自分を撮影した画像を商売目的で利用されることに耐えられない。
というか世論が「大手資本の横暴」のように騒ぎ立て、きっと進まない。
それを見越した経済人はAIに大きな投資をしない。
いま日本でのAI利用は、たとえば医療現場で使う目的で臓器の異常を画像から発見するなど、
誰からも文句が出ないものが中心であり、また、誰からもあまりカネが出ないものだ。
残念ながら日本はAIで世界の先頭を走ることは容易ではないだろう。
ITカレッジ学園長 佐藤 治夫
<プロフィール>
東京工業大学理学部数学科卒業。
ITエンジニアとしてコンビニ、アパレル、保険、銀行、人材派遣など様々な業界のシステム開発を手がけ、現在は株式会社クレスコ社外取締役、ユーザー系企業・顧問 情報活用コンサルティング、IT系企業・顧問 事業戦略策定コンサルティングを兼務。「ダメなシステム屋にだまされるな」(2009年日系BP)など、IT関連の著書も多数。
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