スポーツトレーナーと一言で言っても、実際は色々な形態の働き方があります。
また、働き方によって専門性も違います。
今日は、競技スポーツに関わるスポーツトレーナーを例に、専門性の観点から、スポーツトレーナーという職業について、理解していきましょう。
みなさんが、自分が部活動をする中で、スポーツトレーナーに接する機会があった人もいるかもしれません。
ただ、日本の大学・高校では、本来のトレーナーの姿である、練習・試合にフル帯同する、という形態の雇用はまだまだ少ないので、今日はプロチームや社会人チームのトレーナーをイメージしてください。
プロや社会人チームのトレーナーとなると、直接接したことがあるという人は少ないでしょう。
例えば、プロ野球やJリーグの試合で、ケガで動けない人が出て試合が止められた時に、ケガをした選手のところに駆け寄っていって対処する人。
プロ野球のキャンプで選手のトレーニングを指導したり、ランニングメニューでタイムをチェックしたりしている人。サッカーの日本代表の練習でW-UPを指示している人。などは、テレビなどで見たことがあるのではないでしょうか。
これらはすべて、競技チームのスポーツトレーナーなのですが、チームの中での役割(専門性)は違うのです。大きくは2つに分かれます。
1. ケガをした選手に関わるトレーナー
2. ケガをしていない選手に関わるトレーナー
1. ケガをした選手に関わるトレーナーの仕事は大きくは3つです。
(1) ケガ(傷害)の予防
ケガの予防も、ケガをしたことの無い人の予防と、ケガをしたことのある人の再発予防があります。スポーツトレーナーが対処する機会が多いのは、主に再発予防で、ケガをした部位の筋力強化を行なったり、テーピングで怪我の再発を予防します。
(2) ケガ(傷害)の判断
練習中あるいは試合中にケガをしたときは、スポーツトレーナーがケガの判断をします。どこの部位を、どういうふうに、どの程度痛めたのかを正確に判断します。その結果、練習・試合に出る出ないの判断もします。
その後、病院に行って、検査を受けて診断をしてもらうことにはなります。
(3) ケガ(傷害)からの復帰
ケガをした際に、痛みがなくなっただけで復帰すると、すぐに同じ部位を痛めてしまったりします。
ケガの程度にもよりますが、大きなケガの場合には、手術が必要な場合もあります。手術をした場合は、術後、日常の動作ができない状態になっている場合が多いですので、まずは、動かせるようにし、日常生活の動作ができるようなリハビリテーションを行います。その後、種目や強度を変えて、運動ができるようなリハビリテーションを行います。
2. ケガをしていない選手に関わるトレーナーの仕事は、フィジカル面の指導で選手の
強化やチームの強化に役に立つことです。
フィジカル面の指導=トレーニング と考えると、何が思い浮かびますか?
シーズンオフのつらい走り込みや筋力トレーニングなどが思い浮かぶのではないでしょうか?
ただ、フィジカル面というのは、色々な体力要素で構成されています。
筋力・パワー・全身持久力・筋持久力・柔軟性・スピード・アジリティ・バランス能力などなどです。ですから、単純にフィジカル強化と言うのではなく、競技特性や選手個々の能力を考慮し、体力要素ごとに向上させるメニューを考え、指導することが必要になります。
チーム全体に必要な要素は、チーム練習中に全員で取り組むメニューとして実施しますし、個々の能力を向上させるためには、個人練習の中で取り組むメニューとして実施します。
体力要素は、それぞれの向上が必要ですが、それぞれが関連していたりします。
例えば、カットを切って、ディフェンスを抜く能力を高めたい選手がいるとします。直接的にはアジリティ能力を高めたいので、アジリティドリルを実施するのですが、素早い体重移動をするためには、カットを切る時に体勢を崩さないためのバランス能力も必要ですし、体重移動をするための筋力、素早く切り替えるたためのパワーが必要となります。これらを考慮して、選手個々に必要なメニューを計画的に作成・指導するのがスポーツトレーナーの仕事となります。
また、フィジカル強化の目標は、今まで説明してきた「競技力の向上」に関わることと、もう1つ「傷害の予防」があります。
ケガに直接的には関わりませんが、ケガをした部位を鍛えて再発予防をする、ということには関与していきます。