声優・俳優
【声優本】『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』(岩田光央)
みなさんは「声優」という職業に対してどんな印象を持っているでしょうか?
「すごく厳しそう...」という漠然としたイメージがあったり、なかには「もっと具体的に知りたい!」と感じる人も多いはずです。
そこで今回は、声優・岩田光央さんの著書『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』を紹介していきます。
読んでみた率直な感想としては、かなりおすすめできる内容の濃い一冊だったので興味のあるはぜひ参考にしてみてくださいね。
『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』
出典:Amazon.co.jp
- 著者:岩田光央
- サイズ:新書
- ページ:203ページ
- 発行日:2017/2/10
- 出版:中公新書ラクレ
【内容】
- はじめに:p.3
- 第1章:p.19
- 第2章:p.47
- COLUMN:p.74
- 第3章:p79
- 第4章:p.113
- 第5章:p.159
- おわりに:p.201
著者紹介
岩田光央(いわた・みつお)
1967年、埼玉県生まれ。声優。劇団こまどり、大沢事務所を経て、アクロスエンタテインメント所属。出演作に「AKIRA(金田役)」「頭文字D(武内樹役)」「トリコ(サニー役)」「ドラゴンボール超(シャンパ役)」など多数。子役から芸能界入りした、芸歴30年以上のベテラン。2013年、第7回声優アワード「パーソナリティ賞」受賞。ラジオ大阪「岩田光央・鈴村健一スウィートイグニッション」などにレギュラー出演中。アクロスエンタテインメントの声優養成機関R&A Voice Actors Academy、ラジオ大阪声優&アナウンススクールなどで講師を務める。通称『兄貴』と呼ばれ、後輩やファンに慕われている。
出典:『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』著:岩田光央 出版:中公新書ラクレ
この本の著者は、30年以上にわたって業界で活躍する現役の男性声優・岩田光央さん。
主な出演作は『AKIRA』金田正太郎、『頭文字D』武内樹など、その他にも外画、ナレーション、ラジオ番組などで幅広く活動し、2022年現在は青二プロダクションに所属されています。
また、以前はアクロスエンタテインメントの声優養成機関「R &A Voice Academy」「ラジオ大阪声優&アナウンススクール」などで講師を務めていたことから、これまでに多くの声優志望者を指導してきた実績があります。
書籍紹介
人気職業、「声優」。志望者は激増するも、プロとして生き残る声優は激減、ほとんどの若者が淡い夢の前で挫折していくと著者は警鐘を鳴らす。そこでその実態や成功するための「極意」を全公開。著者はなぜ混沌とする業界で30年以上も食えているのか?これからの声優に求められる資質とは?声優志望者30万人「必読の書」をここに!
出典:『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』著:岩田光央 出版:中公新書ラクレ
『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』というタイトルに思わず惹きつけられた方も多いはず。
もちろん、内容も非常に濃いものとなっており、ご自身の声優人生や後進への指導経験から、"食える声優の極意"を深く解説してくれる内容で、正直なところ、声優学校や養成所でもなかなか教わることのできないことまで紹介されていました。
ざっくり紹介すると、1章では子役時代を含めたご自身の半生を振り返りつつ、2章では昨今の業界の仕組みや声優の現実。
そして、3、4章では前章に対する岩田さんの自論や具体的な"極意"、そして、5章で「それでも目指す人たち」に向けた前向きなメッセージが綴られています。
全体を通して、問題提起からの解決策の提示がわかりやすく、メインとなる"極意"はもちろんのこと、声優という職業の実態、仕事の流れ、ギャラ事情、さらには競争の激化、アイドル化といった問題点についてもかなり深掘りして語られています。
感想・レビュー
出典:『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』p.20-21 著:岩田光央 出版:中公新書ラクレ
良かった点
今では声優に関する本もたくさん出版されていますが、実際に読んでみて"刺さるもの"と"刺さらないもの"がはっきりと分かれることがありますよね。
しかしこの本は、203ページとボリュームはないものの、そのぶん無駄な内容が削ぎ落とされ核心をついた事だけが書かれています。
また、文章も丁寧で歯切れがよく、各テーマごとにきっぱりと結論が提示されているためとても納得しやすかったですね。
個人事業主である以上、声優としての自分という売り物をどうやって売ればいいか、考えを巡らせなければなりません。青果店や鮮魚店が多くの商品を売るために頭を悩ませるように、あなたがどうすれば認められ、そして高く売れるのか、研究し、分析しつくさなければならないのです。
出典:『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』p.126-127 著:岩田光央 出版:中公新書ラクレ
トレーニング方法や具体的なテクニックは第4章くらいで、どちらかといえば、上記のような、業界知識・心構え、あるいは生き残るための戦略的なことがメインになっています。
以前、声優・ナレーターを目指していた僕自身もこの本にもっと早く出会っていればなあ...と感じるくらい、今この道を進もうとしている人に早いうちから知ってほしいことがたくさん記されています。
また、持ち運びにも便利な新書サイズで、手頃な価格もおすすめできるポイントです。
気になった点
唯一気になる点を挙げるとすれば、新書ということもありほぼ文章のみで解説されている点です。
ところどころに写真やイラスト、図解などはありますが、語られる内容も専門的でデリケートなため、読者によっては味気なく感じたりとっつきにくさがあるかもしれません。
こんな人におすすめ
専門的な内容だけに読者を選ぶ本ですし、ある程度のモチベーションがなければ途中で読み疲れてしまう場合もあります。
そのため、現在、あるいはこれから本気で声優を目指す人にこそおすすめで、とくに心構え、業界知識、練習方法、活動のアプローチなど、こうしたことを総合的に知ることのできる内容です。
語られる多くは厳しい現実を突きつけられる内容ですが、反対に多くの知識や答えを示してくれる一冊でもあります。
まとめ
- 業界経験豊富な声優の著書
- 実体験を通したストレートな文章
- 問題提起から解決までがわかりやすい
というわけで、今回は『声優道 死ぬまで「声」で食う極意』の内容と感想レビューを紹介しました。
冒頭、 "満員電車を見て号泣した、あの日"で始まるこの一文に、声優という職業の「異質さ」「不安定さ」を垣間見ることができますが、共感できる人にはきっと大きなインパクトを与えてくれる一冊です。
ライター:ゆうき