ゲーム
VRゲームの可能性と今後について
毎年のように今年こそはVR元年と言われ続けているVR界隈ですが、課題も多く未だ爆発的な普及をみせるには至っていません。
そんなVRですが、今回はVRゲームに的を絞って従来のビデオゲームと比べてどんなところが優れているのか、そして今後のVRゲームはどんな方向に向かって進んで行くのかを改めて考えてみましょう。
【目次】
①VRゲームを取り巻く現状は?
②映像の世界に入り込む没入体験
③体を動かすことによる健康促進
④体験型の学習や訓練
⑤他人とのコミュニケーション
⑥北米VR市場の変化
⑦まとめ
<①VRゲームを取り巻く現状は?>
2023年に入り2月にはPSVR2が10月にはMeta Quest3が発売となり、待望の新機種が出そろったVRヘッドセットですが、販売価格の高騰もあってか期待されていたほどの盛り上がりはみせていません。VRゲーム市場に関しても、悲観的な見方が散見されるようになっています。
とは言え、明るい材料がまったくないというわけでもありません。AR機能を重視し高機能路線に舵を切ったQuest3に対して、廉価モデルが来年登場するという噂もあるほか、今年6月には「東京クロノス」や「DYSCHRONIA: Chronos Alternate」などのVRゲームを手掛けてきたゲームスタジオMyDearestがVRゲームのパブリッシング事業を開始するといった動きもありました。
VRゲームに現状を打開する力はあるのでしょうか。まずはVRゲームの魅力や特徴がどこにあるのかを確認してみましょう。
<②映像の世界に入り込む没入体験>
VRゲームではVRヘッドセットを介して目の前に広がる立体映像と、VRヘッドセットやVRコントローラーに内蔵されたカメラやモーションセンサーによって頭や腕といった体の向きや動きを検出し映像に反映することで、あたかもプレイヤーがゲームの世界に入り込んだかのような体験を可能にしてくれます。ゲーム世界の中で腕や体を実際に動かしてゲームを体感できる。この感覚は従来の2Dゲームでは味わえないものといっていいでしょう。
<③体を動かすことによる健康促進>
②でも触れましたが、VRゲームの多くは体の動きを検出するモーショントラッキング技術を利用しています。これにより従来のコントローラーのような指先の動きだけでなく、体全体を動かしてゲーム内の自分やキャラクターを操作します。
従来の家庭用ゲーム機にもリズムゲームやスポーツゲーム、フィットネスゲームなどはありましたが、それらをより進化させた体験が実現できるわけです。
<④体験型の学習や訓練>
VRは医学生の手術体験や工事現場での作業手順の学習など、高度なシミュレーションによる教育や訓練に利用されているという話を皆さんも小耳にはさんだことがあるのではないでしょうか。ゲームの分野でも各種職業体験や操縦シミュレーターなどで、普段触れることのあまりない分野での体験を気軽に経験することが可能です。
<⑤他人とのコミュニケーション>
多人数参加型のRPGいわゆるMMORPGや、バトロワ系シューティングや各種スポーツゲームなどの多人数参加型の対戦ゲーム、近年メタバースの事例として紹介されることも増えた仮想の街や会場を利用したバーチャルな展示会など、仮想空間での他プレイヤーとの交流が楽しめるのもVRゲームがもつ魅力といえるでしょう。
もちろん従来のビデオゲームでもこれらのジャンルのゲームは存在していましたし、人気のジャンルでもありました。しかし、VRゲームにおいては②で触れた没入感が加わることで、遠く離れた人とも仮想空間内で実際に対面して、競い合ったり共同で問題解決に取り組んだりすることが可能です。
<⑥北米VR市場の変化と今後のVRゲーム>
ここまでVRゲームの長所について駆け足で確認してきましたが、今後のVRゲーム市場においてとくに重要になってくると考えられるのが⑤で触れたソーシャルコミュニケーションツールとしてのVRゲームです。
今年の9月、米国のデータサイエンティスト、ジャック・ソスロー氏のX(旧Twitter)へのポストが話題となりました。
VRやARにおいても従来同様ソーシャルがキラーアプリとなるという主張とそれを裏付けるデータです。2019年6月の時点ではVRゲームのトップ16に占めるソーシャルVRアプリはわずか1本でしたが、2023年の9月にはトップ4の内3つが、トップ13の内7つが、実質無料(F2P)のソーシャルVRとなっていること、10代のVRユーザーが増加していることなどを取り上げ、ソーシャルVRに注力するべき理由を述べています。
(https://x.com/JackSoslow/status/1704238602904064148?s=20)
従来のVRゲームはコアゲーマーやガジェット好きのアーリーアダプター層が中心で、ひとりで楽しむシングルプレイのゲームが中心でした。しかし、現在北米のVR市場ではティーン層が急速に拡大しており、今後のVRゲームは彼らが好んでいる実質無料のマルチプレイゲームが主戦場となりつつあるのです。
<⑦まとめ>
このことから、現在のVRゲームの低迷は、シングルプレイ中心からマルチプレイ中心へとゲームスタイルが切り替わる中で、求められているゲームと供給されるゲームのずれからくる、売り上げの不振が原因のひとつであると考えることができます。
この状況に上手く適応したゲームとしてソスロー氏も取り上げているのが「Gorilla Tag」です。このゲームはプレイヤーは上半身だけのゴリラとなり、両腕を動かすことで移動して立体的なフィールドの中で他のゴリラたちとの鬼ごっこを楽しむという、ごっこ遊びの延長ともいえるマルチプレイ専用のゲームです。
このようにVRならではの体験と交流の場を提供することで、ティーン層にバーチャルな遊び場を用意する。今後のVRゲームはこのような方向に向かっていくのではないでしょうか。