ファンタジーアーティスト 川口忠彦氏
ゲームカレッジのコンセプトイラストを制作いただいた、
ファンタジーアーティストの川口忠彦氏に、クリエイターとしての仕事観についてお聞きしました。
ファンタジーアーティストの川口忠彦氏に、クリエイターとしての仕事観についてお聞きしました。
川口氏描き下ろしのゲームカレッジのイラスト▲
パンフレットはもちろん、学校見学時にオリジナルクリアファイルをプレゼント。
※数に限りがございます。なくなり次第終了。
パンフレットはもちろん、学校見学時にオリジナルクリアファイルをプレゼント。
※数に限りがございます。なくなり次第終了。
川口 忠彦 a.k.a. HesoMoge
ファンタジーアーティスト/イラストレーター
株式会社ナムコ(現バンダイナムコ)にヴィジュアルデザイナーとして新卒入社
オリジナルRPG『セブン~モールモースの騎兵隊~』演出・アートディレクター・背景美術
『ヴィーナス&ブレイブス~魔女と女神と滅びの予言~』監督
「エースコンバット5」劇中童話『姫君の青い鳩』物語と絵
などを手がけ、その後独立
現在フリーランス
『青い鳥のタロット The Blue Birds’ Tarot』アートワーク・企画・プロデュース
など
CDジャケットなど、国内外/メジャーインディを問わず音楽関係のアートワーク多数
現在は絵画を中心に、
濃密な神秘・幻想の世界、生命力・物語・世界観を大切にした
アートの格調を感じる作品を志しています。
Q.印象に残っている仕事・エピソードを教えてください。
ナムコに入社した時から「オリジナルのRPGを作りたい」と思っていたので、アートディレクションをした『セブン~モールモースの騎兵隊~』と、監督をした『ヴィーナス&ブレイブス~魔女と女神と滅びの予言~』は、どちらも自分のやりたいことを詰め込むことができた、かけがえのない仕事です。その頃は、SNSなどまだなかった頃で、プレイヤーの方々と直接交流する手段はほとんどありませんでした。
その後発売から十年近く経って、twitterで作品愛の深いプレイヤーの方たちと次々に接触できて、想いを交換できたことはすばらしい体験でした。
今回のヒューマンアカデミーさんとのお仕事も、担当の方が学生時代にそれらのゲーム作品をプレイなさっていたとのことで、なんと20年近く前からご縁があったわけですね。
時間を超えて繋がれるのは、「作品を残していくこと」の素晴らしさの一つです。
Q.クリエイターという仕事の醍醐味・面白さとは?
終わりがないこと、一生かかっても極めることができないこと。ずっと発見と挑戦があって、
いつまでもフレッシュな気持ちでワクワクして取り組めること。
作品を通じて、年齢も国籍も考え方の違いも乗り越えて世界の人々と通じ合える瞬間があること。
そしてなにより、新しいものが、この世界に現れた瞬間。
Q.作品をゼロから生み出す際に考えていることや、行っていることを教えてください。
記号やテンプレートを当てはめて満足しない、ということです。今は記号的表現やテンプレートにあふれている時代ですが、それを組み合わせて楽しむのは「ほどほど」にして、まだ見ぬものを求める姿勢は、クリエイターにとって最も大切なことだと思います。
絵で言えば、「画力」と同様に、「オリジナリティ」も自分で意識的に育まないと育たないものです。
なので、とにかく「オリジナル作品を作り出すこと」を自分の日々のスタンダードにしています。
小学生の頃からマンガを描いたり、ゲームを作ったりしてきましたが、「オリジナルを作ろう」という気持ちはブレたことがありません。
その中で少しずつ、オリジナリティが育ってきたように思います。
そういう「オリジナルにこだわる」姿勢を維持し続けることがひとつ。
もう一つは、音楽でも映画でもゲームでも、他者の作品で心動かされたときに、「なんでこんな感動するんだろう?」と考え続けることです。
自分なりに答えが出るまで考えて、書き溜めています。
表面をなぞるのではなく、しくみを発見することで、新しく自分で作ることが可能になります。
ゲームを作っていたときも、大好きだったゲームをたくさん分析しました。
Q.これからゲームをはじめクリエイターを目指す高校生に向けて、心構えや背中を押すコメントをお願いします。
みなさんより長くその道を歩いてきたクリエイターとして今回強く言いたいのは、
『大人になるって楽しいよ』
『創作の世界はほんとうに素晴らしいよ』
ということです。
振り返ってみると、学生である期間というのは人生の中で、ほんの一部です。
学生時代はイントロのようなもので、社会に出てからが人生という物語の本編です。
「本編が始まる前に、どれだけ旅の準備をしておくか」という視点を常に持って、これからの仕上げの期間を過ごすと良いと思います。
大人として生きること、創作の世界を追求することは、ほんとうにとても楽しいです。
みなさんの今後の活躍を待っております。
いつか一緒に何かつくりましょう!
Q.今回制作いただいた作品のコンセプトや世界観、キャラ設定を教えてください。
Ⅰ.コンセプト
メインテーマが「挑戦」と「本気の自分」
キーワードは
「世界観を感じる背景」「明るさ」「ゲームのパッケージ的」「10代後半の男女」
これらを最初にいただきました。
これを「私が手掛けてきたゲーム作品の様な方向性で」というリクエストでした。
また、一般的なイラストレーターさんとの違いとして、私がオリジナルのゲーム監督をしてきたというところから、『世界観全体』を作ることをご期待いただいたので、そのようにアプローチすることにしました。
その上で私は、
「専門校の学校案内パンフレットの表紙である」というところに立ち返り、
『パンフとしてのエネルギーの強さ』を出したいと考えました。
見てくれるのは進路を真剣に考え始めた、主に高校卒業を控える学生たち。
なので、完成されたファンタジー世界を描ききるというよりは、
学生たちが自分を投影できつつ、ファンタジー世界へ誘うようなものを目指しました。
現実の世界と、ファンタジー。
とてもよくある図式ではありますが、
ここでのファンタジー世界はこれから向かう「創作」「クリエイト」の世界としての位置づけとなります。
II.世界観
少年少女は、蒼い丘に立ち、これまでに得てきたいくつかの装備品と技を身に着け、決意の表情でこれからの闘いに挑もうとしている。
成長・変容の途上であることを、現実とファンタジーの入り交じった、部分的な装備やアシンメトリなスタイルで表現しています。
眼下に広がる都市。
これは「社会」。経済なども含む現実世界の象徴。
その向こうにある「創作の世界」。
現実社会のさらにその向こうに、先人たちが挑んできた広大な創作の世界がある。
いまも、この少年少女の先輩、数多の猛者があの巨大な塔でしのぎを削っている。
塔の中の勇者たちが活躍することで、さらに塔自体が有機的に成長していきます。
現実のもっと向こうに、壮大でロマンたっぷりの創作の世界がある、という価値観を表しています。
III.キャラクター
二人のキャラクターにはとりわけ「挑戦」「本気の自分」というメインテーマを体現してもらいました。
少女は「ツムギ」。
陸上部で鍛えてきた脚力と長い脚を生かして、【格闘家コース】に進もうとしている。高校も卒業になるし、気合いを入れるために髪を半分染めて、ずっとやってみたかったアシンメトリのボブにしたばかり。足技を中心に習得していきたいと考えている。
少年は「カイト」。
ずっとバンド活動をしてきたが、母の死をきっかけに進路を真剣に考え、【騎士道コース】を選択。守護スキルを中心に学び、仲間を守りながら戦える騎士を目指している。
でもまだまだこれからの二人。
友人たちと切磋琢磨して、本物の戦場に出る日を夢見ている。
IV.視覚的アプローチ
以上のようなコンセプトや設定の部分と、イラストとしての視覚要素を両立するために、以下のような工夫をしました。
「明るさ」というキーワードと
「学生たちの未来に向かうためのもの」でありたいことから、
退廃や黄昏、終末感はあまり出さないように。
イラストとしては、黄昏時などの空に設定すると、陰影が強くなったり、それだけでドラマチックにまとめやすいのですが、今回の『明るさ』や『未来への希望』を表現するには適しません。
ヒューマンアカデミーさんの以前のキーヴィジュアルでも青空が使用され、その健全なイメージが良いと感じたので、そちらを踏襲しました。
一方で、青空は健全ではあるものの、全体のイメージが凡庸になるという面もあります。
空は夕焼け色に染まっているが、雲には反射を入れないという描き方で、青空の爽やかさを保ちながらドラマチックさとの両立を図りました。
それに加え、
足元の丘を強い青に設定することで、この絵の支配色として、鮮烈なイメージを放つようにしました。
V.全体を通して
一枚のイラストというよりゲームのコンセプトアートのような、「ここから世界が立ち上がっていく、最初の一枚」
「これから色々連想してイメージが広がっていくようなもの」
という意識で制作しました。
とてもやりがいがあり、楽しい制作でした。
ありがとうございました。