声優・俳優
【朗読・原稿読み】読解力と表現力アップのための本の読み方
声優を目指す人のなかには、はじめて朗読に挑戦する人も多いのではないでしょうか。
しかし、朗読をするにあたって、そもそもどのようにアプローチしていけばいいのか悩む人も多いかもしれませんね。
そこで今回は、朗読・原稿読みを上達させるための本の読み方からスキルアップまでの基礎を徹底解説していきます。
本の読み方から棒読みといった実践的な部分まで詳しく紹介していくのでぜひ参考にしてみてください。
本の読み方
作品を決めたらさっそく声に出して練習といきたいところですが、まずは作品を理解するための作業が必要になります。
これができていないと、ただ声に出して読むだけの浅い朗読になってしまいがちなので、以下で読み込み・書き込み・組み立ての3つの行程に沿って本の読み方を解説していきますね。
※【朗読作品の選び方】初心者におすすめしたい作品選びのポイント(2021.02.08)
読み込み
はじめに、作品をしっかりと読み込む作業をしていきましょう。
このときに、ただなんとなく読み進めるのではなく様々な視点で繰り返し読んでみることが大切です。
例えば、以下のように一つずつテーマを決めていくと、その作品の違った側面をみることができ毎回新しい発見があるはずです。
- 作品を通して一番伝えたいポイントを探す
- 作品の魅力を探す
- 時代背景を考える
- 各登場人物の役割を考える
クスッと笑える作品なら笑える要素、泣ける作品なら感動できる要素を探して読んでみるのも良いですし、ポイントごとに付箋を活用しておくのもおすすめです。
短い作品なら何度も読み返しやすいので、テーマは広く読み込みは深くを意識して取り組んでみてください。
書き込み
読み込んだら、それぞれのテーマで重要だと感じたポイントを原稿に書き込んでみましょう。
作品の概要を書き出すのはもちろん、場面の切り替わり、物語の転換点となっているパートなどにチェックを入れていくのも大切です。
また、登場人物が多い場合は簡単な相関図を作ってみるも良いですね。
物語の流れや起承転結の構成が見えてくると、朗読の具体的なアプローチの仕方が掴めてくるはずです。
また、作品の魅力や作品を通して伝えたいことはとくに大事なポイントになるので、ここも忘れずに書き込んでおいてください。
組み立て
最後に、チェックした各ポイントをどう表現すれば良いかを組み立てる作業ですが、このときに声に出して練習しながら練っていくと確認しやすいです。
例えば、大事な部分を強調したり、物語の展開に合わせて読むスピードを変えてみるなどですね。
また、実際に朗読をするにあたって、作品のテイストにあわせた声のトーンやスピード、間の取り方を意識してみるとさらに雰囲気が出てくるはずです。
練習の際は、ボイスレコーダーなどで録音し聴き返すと良かった点や気になる点がわかりやすいのでおすすめですね。
それでは、ここまでのステップを芥川龍之介の『蜜柑』を例に紹介していきます。
『蜜柑』芥川 龍之介
出典:Amazon.co.jp
テキスト:https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/43017_17431.html
【ポイント】
- 発表:1919年(大正8年)5月
- 人物:私(都会に住む男)、田舎者の小娘
- 舞台:横須賀発の上り二等客車内
- 魅力:心の変化、繊細な心理・風景描写
- メッセージ:あたたかい気持ち
1919年5月に芥川龍之介によって発表された『蜜柑』は、横須賀から東京へ向かう列車の中での物語で、実際に作者自身の体験に基づいたエッセイ作品と言われています。
前半の陰鬱さや憤りが込み上げてきたところから、ラストでガラッと変わる清々しい展開が魅力の作品ですね。
心理描写と情景描写が重なる様子は秀逸で、最後まで読んでみると、それまでの「小娘」の見た目や無遠慮なふるまいも含めてあたたかい気持ちにさせられます。
物語は終始「私」目線で進んでいきますが、読む際には客観的な視点も持ちながら上記のポイントを意識していくのが大切です。
さらに、場面の切り替わりをブロックごとに分けてみたり、作品における登場人物の役割、風景描写の意味についてさらに細かく書き出してみてもいいかもしれません。
読み返しながら、以下のように物語の重要な部分や言葉を押さえて朗読するとより作品が活きてくるはずです。
- どんよりとした景色と重なる私の心
- けたたましい日和下駄("晴天の日"に履く歯の低い下駄)の音
- 小娘について(顔立ち、服装、言動など)
- しっかりと握られた三等切符
- 小娘に対する私の感情
- 窓を開けるやりとり(滑稽な様)
- 隧道を抜けた先の貧しい町はずれの様子
- 蜜柑による心の変化
- しっかりと握られた三等切符
作品を通して何を伝えたいかは人それぞれですが、僕の場合は『蜜柑』を聞く人にあたたかい気持ちになってほしい感じていて、作品を集約したような以下の一文がとくに大切なポイントになります。
『が、私の心の上には、切ない程はっきりと、この光景が焼きつけられた。』
朗読をする際は、こうした要点を押さえつつ、イメージを膨らませながら表現できるように取り組んみましょう。
上達の実践アプローチ
ここからは、いざ朗読をするときにありがちな悩みを中心に、習慣的なトレーニングから簡単に実践できるものまで、幅広く取り上げてみたのでぜひ参考にしてみてください。
棒読み
おそらく多くの人が悩むのが「棒読み」で、実際に録音して聞いてみると想像以上に声がのっぺりしていることはよくありますね。
実は、マイクを通して聞いた声というのはどうしても音の輪郭が削られています。
マイク越しに喋る、あるいは配信を目的に朗読する場合は、自分が思っている以上にニュアンスを入れていくことを心がけましょう。
では、棒読みを改善するときにどこを気をつけるべきかというと、「抑揚」と「語尾」になります。
ここでは、抑揚は「音の高低」、語尾は「文末の音の扱い方」を指します。
【抑揚】
抑揚をつけるコツは、文章に対して「5W1H」を考えてみるのがおすすめです。
『私は、明日勉強のため書店へ本を買いに行きます。』
こちら例文では、「私は」の音を高くすると"誰が"行くのか?が強調されてわかりやすくなり、「本を」を強調すると "何を"買いに行くのかが明確に伝わりやすくなりますね。
こうした方法を「卓立法」と言い、音の高低だけでなくスピードやトーンを変えることでも強調でき棒読みから立体感のある表現に変わるはずです。
そして、抑える音はしっかり抑えるとさらに抑揚のメリハリもついてきますね。
文章のどこを強調すべきか?を絞って抑揚を使ってみてください。
- 私は:誰が?(Who)
- 明日:いつ?(When)
- 書店へ:どこに?(Where)
- 本を:何を?(What)
- 勉強のため:なぜ?(Why)
- 買いに行く:どのように?(How)
【語尾】
「~しました。」「~だった。」「~である。」など、様々な語尾がありますが、ここでも音の扱い方が大切になってきます。
例えば、子どもが喋るときの語尾は音が下がらず「投げ放つ」ような音になりがちですね。
しかし、アナウンサーの場合ここを「〇〇しました⤵︎」とゆっくり丁寧に音を落として喋るのがわかると思います。
どちらが適しているかは文章や作品によりけりですが、基本的には綺麗におさめた方が朗読にまとまりが出てきます。
こうしたプロの朗読や喋りを聞いて参考にするのもおすすめの方法です。
そして、もう一つがキャッチボールのイメージトレーニングです。
文章一行一行を朗読する際に、目の前に相手を想定して言葉の放物線をイメージしてみてください。
最初は短い文章の方を、誰かに聞いてもらったり録音しながら自分で確かめていくのがおすすめです。
こうすることで、自然と語尾に意識が向かい放物線のイメージから丁寧におさまりやすくなるはずです。
- 言葉を届ける相手を具体的にイメージする
- 人、距離、強さ、表現、反応などイメージする
- 音の放物線をイメージし語尾をおさめる
声が暗い・弱い
朗読をしてみて、自分の声が暗い・弱々しいと感じる人もいるかもしれません。
とくに、楽しく明るい作品を扱うとより顕著になって現れますね。
そこで、声を強くしトーンを明るするには、体の状態を変えることがおすすめです。
例えば、姿勢を正し表情も明るくすると、より聞きやすく届きやすい声になります。
- 声を明るくする:口角を上げて喋る
- 声を前に出す:胸を開き顎を下げて喋る
また、実際に軽い運動をした後は声のテンションをキープしやすいですし、楽しかったことを思い出して表情を変えればより楽しい感情が声に乗りやすいです。
※【表情筋トレーニング】鍛えると滑舌も良くなる!様々なメリットとおすすめの練習法(2020.01.24)
※【ブレストレーニング】自宅でできるおすすめの音を出さない練習5選(2021.04.18)
滑舌が気になる
朗読に欠かせない要素が明瞭な滑舌ですが、苦手な文字や緊張からつい噛んでしまう人も少なくないはずです。
かといって、本番でハキハキ喋っていては、かえってぎこちなく不自然になりますね。
滑舌練習といえば、口を大きく開けて練習するのが一般的ですが、ここでは「口輪筋(こうりんきん)」や「舌筋(ぜっきん)」を鍛えるトレーニングを紹介していきます。
【おすすめ唇トレーニング】
- ま行「まままま~、みみみみ~、むむむむ~、めめめめ~、もももも~」
- ぱ行「ぱぱぱぱ~、ぴぴぴぴ~、ぷぷぷぷ~、ぺぺぺぺ~、ぽぽぽぽ~」
【おすすめ舌トレーニング】
- 口を開けて、舌を思いきり伸ばす→縮める(繰り返し)
- 口を開けて、真ん中→上→下→左→右に伸ばす(繰り返し)
滑舌は筋トレに近く、すぐに良くなるものでもありませんが、それでもポイントを絞って練習することで効率的に改善できたりします。
明瞭な声ほど聞いていて気持ちが良く、印象も良くなるので、気になる人はしっかりと取り組んでみましょう。
※【滑舌を良くする!】手軽で超効果的に改善できる絶対おすすめの練習(2019.10.28)
※【舌トレーニング】おすすめの滑舌練習5選!(た行・な行・ら行)(2021.11.15)
誤読・読み間違い
滑舌とあわせて注意したいのが誤読や読み間違いですね。
作品によっては、難しい漢字やカタカナが頻出してきますが、その対策として原稿を見やすいようにアレンジしておくことがおすすめです。
例えば、赤やオレンジなどのカラーフリクションで記入すると区別がつきやすいし、自分なりのルールを作って記号(マーク)を書いておくのも効果的です。
【おすすめ原稿チェック法】
- 色で区別をつける
- 記号を付け足す(抑揚、区切りなど)
- ふりがなを書く
- 中途半端な改行をわかりやすくアレンジする
また、読むときに緊張でつい前のめりになりがちですが、原稿から少し離れて文章全体を俯瞰しながら捉えると読み間違いが少なくなります。
※不思議と滑舌が良くなる!絶対に噛まないための原稿チェック法【裏ワザ】(2020.03.20)
一本調子
自分の朗読に「単調で変化がない」と感じる人も多いかもしれません。
こうした一本調子の原因は、「場面の切り替わり」「改行」「句読点」「区切り」などができていない場合が多いです。
そこで、「呼吸」と「間」を意識することで"活きた朗読"にかなり近づいてきます。
【呼吸】
みなさんも、日常会話の中で「でもさ...」「だけどね?」といった言葉を使うと思いますが、このとき思考が切り替わると同時に、呼吸を「スッ」と入れて喋るはずです。
それにより、自然と言葉の頭に抑揚やアクセントが付き、前の言葉に比べて音が切り替わっているのがわかると思います。
朗読の際も、句読点や改行を参考にシーンの切り替わりで呼吸も切り替えると言葉に抑揚が生まれてくるはずです。
【間】
呼吸と同じく大切なのが「間」を使うことで、こちらも一本調子を変えるための効果的な方法ですね。
例えば、場面転換や緊迫したシーンではじっくり間をとることが多いですし、改行や句読点でワンクッション置いたりなど、実は文章のいたるところに「間」を取れる部分があります。
一拍(一呼吸)、半拍(半呼吸)置いて、あるいは置かずに喋るかどうかで朗読のテンポに変化が生まれ、聞いていて飽きない読みになるはずです。
作品を読み込むときに、呼吸や間を入れられるポイントをテーマにして探してみるといいでしょう。
表現力をつけたい
朗読の醍醐味とも言えるのが、言葉を使った表現や情感を込めた語りですね。
そのためには、自身の想像力を今まで以上に養うのも一つの方法です。
日頃、みなさんが文章や文字から何を感じながら喋っているかですが、過去の実体験のように想像力が深く鮮明になればなるほど言葉にも深みが増してきます。
もちろん、これは朗読だけでなく演技や歌唱にも活きてきますね。
以下は、想像力の引き出しを増やすおすすめのトレーニングですが、それぞれのお題を3パターン違う表現で言葉にしてみてください。
例えば、「街」と聞いてみなさんがどんな街を想像するかですが、それが賑やかな街なのか、静かな街なのか、時刻は朝なのか、夕方なのか、あるいは夜なのか、小さな駅前の商店街かもしれませんし、都心のオフィス街かもしれません。
自分が思う3つの街をできるだけ具体的にイメージし声に出してみると、それぞれ違ったニュアンスで表現できるはずです。
【おすすめのイメトレ】
- 「街」
- 「透き通った青空」
- 「散りゆく落ち葉」
- 「日曜日の朝に響く話し声」
- 「うっとりするような黒い瞳」
- 「真夜中にドアをノックする音がした」
この他にも、日常生活で見たものや感じたこと、様々な文章を読む際にイメージを膨らませて言葉にする訓練を繰り返すことで想像力が養われていきます。
まとめ
というわけで、今回は朗読・原稿読み上達のための本の読み方からスキルアップまでの基礎をご紹介しました。
ここで取り上げたポイントももちろん大事なのですが、「朗読」とは「朗(あき)らか」に「読(よ)む」の文字通り、読み手に迷いが生まれたり自信がなくてはそれが声に出て相手にも伝わってしまいます。
どんな作品を朗読するにしても、声に出すときは必ず自信を持って伝えることを心がけてみてくださいね。
※【朗読入門】初心者におすすめの短編作品を紹介(2020.06.25)
ライター:ゆうき