声優・俳優
【鼻濁音とは?】発音のための知識とコツを解説
声優やナレーターを目指すときには必ず教わることでもある「鼻濁音(びだくおん)」ですが、あまり馴染みのない人も多いかもしれません。
僕自身、声優学校に通っていた頃に講師から「最近の若い子は鼻濁音が使えない子が多いからね~」なんてことを言われた経験もありますが、方言や喋りのクセがある人ほど発音までに苦労するのが鼻濁音でもあります。
しかし、鼻濁音には様々なメリットがあり、言葉の印象が大きく変わることも事実です。
そこで今回は、鼻濁音の基礎知識から発音のコツまで詳しく紹介していきます。
鼻濁音とは?
鼻濁音は、「軟口蓋鼻音(なんこうがいびおん)」と呼ばれる発音方法に属し、な行・ま行で使われる鼻音に近い音になります。
別名「が行鼻音」とも言われ、一般的な言語表記は「か゚、き゚、く゚、け゚、こ゚」、アクセント表記は「ŋ」になります。
- 呼称:が行鼻音
- 言語表記:か゚、き゚、く゚、け゚、こ゚
- アクセント表記:ŋ
舌の腹を軟口蓋奥にあてるなど、発音は濁音の「が行」と似た部分もありますが、"息を鼻へ抜く"点が大きな違いになります。
詳しい発音は後述しますが、「が」(g+a)の音に「な行」子音(n)に近い発音(ŋ)を加えて、「んが(ŋga)」と発音するイメージですね。(※「ん・が」とそのまま発音しないように注意)
最近は、若者を中心に濁音傾向の強い人が多いですが、東日本を中心にか゚行音の混ざる音が見られたり、放送業界でも鼻濁音の教育が徹底して行われているのも事実です。
【か゚行音の見られる地域】
- 東北地方
- 北陸・東海地方
- 近畿地方
鼻濁音のメリット
「そもそも鼻濁音って重要なの?」と感じる人も多いかもしれませんが、音の違いに気づけばその特徴が理解できるのではないでしょうか。
例えば、テレビやラジオを聴いていると、「この人の話は聴きやすいなあ」「喋り方が綺麗だなあ」と感じた経験は誰にでもありますよね?
アナウンサーやナレーターといった方々がわかりやすいですが、僕の場合、年配の女優さんにこういった印象を受けることが多いです。
もちろん、声や滑舌、丁寧な言葉遣いや挙措からそういった印象を受けるかもしれませんが、しっかり聞いてみるとほとんどの人が鼻濁音を使って喋っていたりしますね。
【音の印象】
- 濁音:刺々しさ、荒々しさ
- 鼻濁音:丸さ、柔らかさ
不要な濁音を鼻濁音へと変えていくことで、話し方にトゲトゲしさや荒さがなくなり品や柔らかさがプラスされていきます。
もちろん、あるキャラクターを演じる際にも鼻濁音を用いることでセリフの印象が変わって聞こえるはずです。
発声・滑舌に比べれば細かいことですが、声優・ナレーターを目指す人にとっては必須の基礎スキルとなります。
発音のポイント
それでは、実際に鼻濁音を発音するためのポイントを解説していきます。
口の開きや舌のポジションは普段喋る「が、ぎ、ぐ、げ、ご」と同じです。
舌の腹を軟口蓋に触れるようにしますが、息の送り方は「な行」に近いものになります。
そのため、「が行」のようにブレスで舌を強くしてはじいてしまわないこと、舌+軟口蓋でブレスを鼻へと抜けさせる道を作ることがポイントです。
濁音のような破裂音にならないように、ブレスや舌の動作は優しく柔らかくを意識してみてください。
【鼻濁音のコツ】
- ブレスで舌をはじかない
- 舌と軟口蓋で鼻へブレスの通り道を作る
- 柔らかく鼻へ抜いて発音する
チェック方法
鼻濁音が出来ているかの確認方法として、鼻をつまみながら発音してみることがおすすめです。
- 鼻をつまんで発音できる→濁音
- 鼻をつまんで発音できない→鼻濁音
鼻をつまんでも発音できないのであればうまく鼻へ抜けている証拠なので鼻濁音ができている証拠ですね。
基本的に、鼻音系の音は鼻をつまむことで発音できなくなるので覚えておきましょう。
また、鼻先の前へ指を当てブレスがしっかりと鼻へ抜けているかチェックしてみるのもおすすめです。
- 鼻の穴から息が出ていない→濁音
- 鼻の穴から息が出ている→鼻濁音
鼻濁音のコツがつかめないときは、このようにブレスを鼻へ抜いていく感覚をまずは覚えていきましょう。
鼻濁音化してもOK・NGな言語
最後に、鼻濁音化してもよいケースとそうでないケースをご紹介していきます。
少しややこしいですが、なかには例外的なパターンもあるので発音すべき言語をしっかり把握しておきましょう。
【鼻濁音OKな例】
- 第二音節以降のが行音:午後(ごこ゚)、授業(じゅき゚ょう)、刺激(しけ゚き)
- 連濁:氷菓子(こおりか゚し=氷+菓子)、心変わり(こころか゚わり=心+変わる)
- 助詞・接続詞:私か゚、ところか゚、だか゚
- 熟語化した数詞(五):七五三(しちこ゚さん)、十五夜(じゅうこ゚や)
【鼻濁音NGな例】
- 第一音節のガ行音:愚痴(ぐち)、外国(がいこく)
- 接頭語後の第一音節:お行儀(おぎょうき゚)、新劇場(しんげきじょう)
- 複合語:高等学校(こうとうがっこう)、衆議院議員(しゅうき゚いんぎいん)
- 外来語:窓ガラス、ゴーグル
- 擬音語・擬態語:ゴロゴロ、ぐらぐら
- 数詞(五):十五回(じゅうごかい)、午後五時(ごこ゚ごじ)
【例外としてOKなもの】
- 複合語(馴染み深い言語):小学校(しょうか゚っこう)、中学校(ちゅうか゚っこう)など
- 外来語(馴染み深い言語・「ン」に続く音節):イキ゚リス、ソンク゚など
まとめ
というわけで、今回は鼻濁音の基礎知識と発音のポイントを紹介しました。
近年、発音できる人は少ない傾向にありますが、鼻濁音が日本語本来の美しさを引き出してくれることは間違いありませんね。
ポイントを押さえてしっかりマスター出来ればみなさんの言葉の印象もアップするはずなのでぜひ実践してみてください。
※【無声化とは?】正しい発音と確認方法(2020.02.20)
※【平板型・起伏型とは?】日本語アクセントを種類別に細分化!(2021.08.31)
ライター:ゆうき