声優・俳優

【朗読・原稿読み】"伝える"5つのアプローチ

57 (1).jpg練習方法

朗読や原稿読みでは様々なことに気を配る必要がありますが、みなさんも実際に自分の声を録音して聞いたときに「言葉にいまいち説得力がない」「内容が伝わってこない」と感じたことはありませんか?

実は、オーディションのテープ審査などでも、"伝わらないもの"はすぐに見切られてしまう可能性があり、声優を目指す人にとっては絶対に欠かせない要素ですよね。

実際のところ、原稿読みに慣れていない多くの人は、文字に弱い、表情が堅い、スピードやテンポが速いといったことが挙げられ、これらが伝わらない大きな要因だと感じています。

僕自身も、以前はこうした経験をたくさんしてきましたが、学校や養成所、現場を通して培ったものから「相手に伝えるにはこうしたほうがいいな」という答えやヒントを知ることができました。

そこで今回は、声優・ナレーターを目指す人たちに向けた"伝わる読み"にするための5つのアプローチ方法をご紹介していきます。

実践することで、これまでの読み方が確実に改善されるのでぜひ参考にしてみてください。

伝わらない原因は?

うまく伝えられない原因はいくつかありますが、多くの人にありがちな問題は「意識」だと思っています。

というのも、日常会話であれば誰でも普通に喋れていて、相手も内容に共感してくれて自然とコミュニケーションが発展していきますよね。

しかし、原稿が用意され誰かに聞いてもらうとなると、緊張が増して文字に捉われたり、相手の反応を感じられず、どこかテンポが速く堅苦しい読みになりやすいです。

こうした非日常的なシーンになればなるほど自分の内側へと意識が向きがちですが、言い換えれば、いつものように自然体で語りかけることができれば伝わる読みに大きく近づくことになります。

5つのアプローチ方法

原稿をアレンジする

まずは、原稿を自分の伝えやすいようにアレンジしてみましょう。

当たり前なことですが、本番で頼りになるのは原稿のみです。

何度も読み込めば自然と慣れてきますが、内容によっては読みにくい文章もあります。

本番までに、そうした不安要素を少しでもな失くしておくのがおすすめです。

【主な改善ポイント】

  • チェックのペンは「赤」「オレンジ」などわかりやすい色で統一
  • 噛みやすい部分には「下線」or「波線」
  • 難読の漢字・カタカナ等にはひらがなの「ふりがな」をあてる
  • 文の中途半端な切り替わりは「改行」して書き加える

あまり書き込みすぎるとかえって複雑になるので、練習を重ねていき余分な箇所は消したり必要な部分を絞っていくのもおすすめです。

読み進めていくときに、できるだけ自分の表現に集中できる原稿を意識してみましょう。

不思議と滑舌が良くなる!絶対に噛まないための原稿チェック法【裏ワザ】(2020.03.20)

内容を整理する

朗読や原稿読みでは、自分が何を伝えたいか?をはっきりさせておくことが大事です。

例えば、日常会話で「今日こんな有名人を見たんだよね~」と話すときに、嬉しかったのか?驚いたのか?自慢したいのか?によって同じ言葉でもニュアンスが変わってきますね。

さらに、どんな場所で、どんな人を、どのように見たのか?など、自然とその瞬間の様子をしっかりイメージすることができているはずです。

これを朗読や原稿読みに置き換えて、要点を明らかにし、内容を具体的に想像しながら伝えることで、言葉に表情が生まれ強調や抑揚といった変化もつきやすくなります。

  • 要点をまとめる
  • 具体的にイメージする

先ほど紹介した原稿チェックの要領で、「囲み」や「横線」を書き込んでおくとわかりやすくておすすめです。

体を柔軟にする

一見すると、言葉を伝える上であまり関係ないと感じるかもしれませんが、「心技体」と言われるように、表現をする上でも体の動きは心や技と連動しています。

言葉に感情を乗せたいときにも、まず体から変えていくことはとても効果的なアプローチで、全身にグッと力を入れれば力強い声が、その後にパッと脱力すれば息が上がった弱々しい声が、といった感じでそれぞれに適した声が出しやすいはずです。

また、口角を上げれば声のトーンが明るくなりますし、胸を開いて姿勢を正せば声が前に出やすくなりますね。

ちょっとしたことですが、日頃から表情筋を鍛えたり体の瞬発力があるほど、よりリアルな声になって相手に伝わりやすいと言えますね。

【表情筋トレーニング】鍛えると滑舌も良くなる!様々なメリットとおすすめの練習法(2020.01.24)

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相手を意識する

先述したように、原稿読みに慣れていない人の多くはスピードやテンポが速くなりがちで、これも伝わらない大きな原因の一つです。

聞き手のモチベーションが高ければ、速かろうが遅かろうが問題ないですが、実際はそうでないことがほとんどですね。

そこで意識すべきは、聞き手になる「相手」を意識した伝え方の組み立てになります。

内容をイメージしながら、間()の取り方やスピードの変化を意識してみるといいかもしれません。

  • 原文

ここ

どっかに行こうと私が言う

どこに行こうかとあなたが言う

ここもいいなと私が言う

ここでもいいねとあなたが言う

言ってるうちに日が暮れて

ここがどこかになっていく

出典:『女に』著:谷川俊太郎 出版:集英社文庫

  • 原稿チェック

=一拍(一呼吸)

/=半拍(半呼吸)

 =スピードダウン

ここ

どっかに行こうと/私が言う

どこに行こうかと/あなたが言う

ここもいいなと/私が言う

ここでもいいねと/あなたが言う

○○言ってるうちに日が暮れて

ここがどこかになっていく

僕なりのチェックになりますが、上記のようにポイントごとにしっかり間をあることで「私」と「あなた」の会話がわかりやすくなり「言ってるうちに日が暮れて」の時間経過も想像しやすくなるはずです。

また、ラストの「ここが」が強調されてゆっくり締めることができるので、文章にメリハリをつける意味でもスピードやテンポはとても大切になってきます。

夕暮れに二人が寄り添いながら話している様子をイメージすると、よりゆったりとした温かみある表現が生まれてくるかもしれませんね。

このように、自分のイメージを相手に共有してもらうために組み立てていくと伝わりやすくなるはずです。

"声の放物線"をイメージする

「マイク越しだと伝わってない気がする」「原稿があると喋りが堅くなってしまう」という人も多いかもしれません。

そんなときに実践してほしいのが、"声の放物線"をイメージして語りかけるように喋ることです。

よく「会話はキャッチボール」と言われるように、自分の放った言葉が相手の胸元にストンと届くことを心がけてみてください。

実際に、家族や友人に聞いてもらったり、ボイスレコーダーなどを置いてみるのもいいかもしれません。

柔らかい文章であれば優しく丁寧に、力強く届けたいのであればビシッと語尾を締めるイメージで、声が届いてないのであればもう少し大きくし、逆に圧迫感や相手を通り越してしまう感覚があれば小さく近くに語りかける感じです。

【ポイント】

  • 距離
  • 強さ
  • 明るさ
  • 柔らかさ

これらを意識することで、原稿に向かって喋るのではなく相手をイメージしながら適切な距離感で語りかけることができますね。

また、放物線をイメージすることで語尾がおさまりやすくなり丁寧な印象を与えることもできます。

他にも、具体的にどんな人に向かって届けるのか?届いた後の反応はどうか?までイメージできると聞き手を引き込みやすくなるはずです。

【卓立法とは?】解説と「相手に伝わる話し方」のテクニック(2021.03.02)

まとめ

というわけで、今回は声優・ナレーター志望者におすすめの役立つ"伝え方"のポイントをご紹介しました。

これらが上達するだけで、作品や内容の魅力がグッと増すだけでなく、オーディションなど様々な場面で応用できるスキルにもなります。

ぜひ、相手をイメージしながら自然体で語りかけること実践してみてくださいね。

【朗読入門】上手くなるのための本の読み方と表現のコツ【徹底解説】(2021.06.18)

ライター:ゆうき

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