Principal column校長コラム

札幌校|廣田 邦生校長

大学入試の改革について考える

 グローバル化や技術改革が進み、社会で求められる力も変化している現代。新たな時代を拓く人材育成を見据え、2020年度から文部科学省による大学入試改革が始まる。

 これまでの、学んだことを理解する力である知識の習得から、知識や技能の習得を元に「自分で考え、判断し実際の社会で役立てる力」である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協同して学ぶ態度」 である学力の3要素に重きを置いた大学教育へとシフトしていく。

 いままでの日本では、大学を卒業したらどこかの組織に入り、そこで定年まで勤めるという終身雇用が一般的だった。しかし、社会が急速に変化する中、人生100年時代が到来して働く年数が長くなると、同じ組織で同じように働き続けることは難しくなってきた。実際、経団連の会長もトヨタの社長も終身雇用は成立が難しくなると明言している。自分のキャリアは、組織に預けるのではなく、転職や起業、副業といった手段をとりながら、自分自身で形成していくという覚悟が必要になってくるという。これからの大学教育は、この点を重点的にとらえ教育改革を進めているといえるのではないだろうか。

 こうした時代背景の中で注目されているのが、”プロティアン (環境の変化に応じて自分自身も変化させていく、柔軟なキャリア形成)”というキャリアのあり方であるという。社会が変化していく中で自分自身を適応させていくということである。ギリシャ神話に出てくるどんなものにも変身できる変幻自在の神、プロティウスが語源らしい。

 キャリアというのは、一人ひとりが持っているものであり、これまでの経験の集積であり、羅針盤でもある。いわば、”過去・現在・未来” をつなぐ自分の道であるといえる。そこでポイントとなるのが”アダプタビリティ(適合力)” と”アイデンティティ(自分らしさ・自分とは何か)”である。どちらも大切であるが、アダプタビリティとは、社会が求めることに応じる外に向かう力のこと、アイデンティティは自分を突き詰める内に向かう力のことであるという。キャリアにおいて”変わる”というのは、変わりゆく社会的なニーズや市場、関係性を分析しながら、求められるものやレベルに自分を適合させていくことであるという。

 これからの大学教育では、変化する社会に向かう人間力である”生きる力”を身に付けさせる教育を求めているのではないだろうか。

一人ひとりが自信を持って、目指す専門分野で活躍できるよう、全力で指導していきます。

札幌校

廣田 邦生 校長

北海道歌志内高等学校校長、北海道北広島西高等学校校長、 全国普通科高等学校長協会理事、北海道高等学校長協会普通部会副部会長、 北海道高等学校校長・教頭体育会事務局長などを歴任。