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オーディション合格への道

オーディション研究家
二村 知宏

日本大学芸術学部演劇学科演技コース卒。
演劇祭等の企画製作、俳優・タレントのマネジメント経験後、各声優・俳優・タレント系専門スクール、養成所の企画開発等に携わる。入所・所属オーディション等においては述べ数千名の審査員を務める。

「エデュパ芸能マスコミガイド"オーディション対策講座"」
2010年〜2013年
「おたすけ進路:声優編・俳優編"オーディションの受け方"」
2011年〜2013年
(以上、夏書館にて発売中。)他コラム等多数執筆。
現在は、株式会社アクロスエンタテインメント『j.ボイスタレント・プロフェッショナルスクール』代表を務める。
http://jvoice-academy.com/

オーディション対策の重要性

はじめまして。二村知宏です。
本校ではオーディション対策授業などの特別講師を務めています。このコラムを通じて、"声優をめざす人"の役にたてるとしたら、

1.実際のオーディションや授業を通じ、"声優をめざす人"と延べ数千名と接し、合格者の傾向を把握している。
2.各声優系プロダクションの社長、理事長の方々との交流があり、オーディション情報や審査ポイントを分析している。

以上の経験などから、オーディションに合格するポイント、"オーディション合格への道"について語ることではないかと考えています。
まず、はじめに、"オーディション対策とは?対策の重要性"についてお話します。声優になるためには、専門学校などで基礎技術を習得し、プロダクション付属の養成所に入所、もしくは所属オーディションに合格しなければなりません。
つまり、オーディションに合格しなければなりません。声優は、人々に夢や希望をもたらす特殊な職業ですが、一般社会において、就職試験があるように、ある一定のスキルを身につけなければ、仕事として成立しません。オーディションにおいては、演技や歌、ナレーションなどの技術力はもちろん、礼儀や話術、一般常識、服装、髪型など全てが審査されています。オーディションの合格率を高めるには、これらに関する知識、情報や模擬オーディションなどの実践が必要になります。オーディション対策の具体的内容としては、

@声優業界全般の知識を身につける
(歴史、業界の傾向、プロダクションについてなど)
A各プロダクションのオーディション課題を把握する
(演技、ナレーション、自己PR、質疑応答など)
B審査員の見るポイントを把握する
(技術、人格、ビジュアルなど)
C自分の強み、弱みを理解して強化する
(PRの強化、自己プロデュースなど)
D模擬オーディションなどで実践を重ねる
(緊張の克服、実力を出し切るなど)

となります。これまで合格してきた生徒を分析すると、単純に、勉強、研究熱心で、この業界で生活するために、本気で取り組もうとしています。当然、オーディション対策にも万全を期し、望んでいます。
特に、Cの自分の強み、弱みを理解し、自己PRも強化しています。さらには、服装や髪形も含め自己プロデュースしています。オーディション対策に取り組むことによって、実際の合格率を高めることともに、声優としてだけではなく、人としてより輝き、魅力的になっていくことでしょう。

オーディションの審査課題、審査ポイントについて

今回は、オーディション対策の具体的内容である
●オーディション審査課題
●審査員の見るポイント

についてです。では、早速、オーディションの審査課題から見ていきましょう。

【オーディションの審査課題(事例)】
1.書類審査
オーディション用の履歴書を提出。経歴、写真、自己PRなどがチェックされる。
*基本的には、書類審査合格後、実技審査となる。
2.実技審査
<審査事例>*一時審査に多い課題
@実技(台詞):創作台詞や台本の抜粋など。
Aナレーション・朗読:声優プロダクションでは必須課題。
台詞同様に創作文など。
B自己PR:時間は1分間が多い。トークのみ。もしくは、特技、実技を入れる場合もあり。
C質疑応答:審査員からの質疑応答。オーディションの時間制限により、2次以降で重視される場合も。
*2次以降の審査では、プロダクションにより様々となる。キャラクターを重視した台詞課題、マイクテスト、個別面接など。また最近では、各自で演技・ナレーション課題を持参する「自由課題」、演技などの実技を入れ、自分で自由に表現する「自己表現」、アカペラでの歌唱など、プロダクションによって特殊な課題も増えています。

【審査員の見るポイント】
アニメ、ナレーション、音楽など各プロダクション側の強みや特色によってポイント、求める人材像は異なりますが、大きく3つに分類することができます。
まさに声優になるための「心・技・体」です。特定のプロダクション、審査員ではなく、普遍的(複数の審査員に当てはまるポイント)と考えて下さい。
1.心(人柄・キャラクター性)
○礼儀、マナー(あいさつ)○コミュニケーション能力○やる気(本気度)○清潔感○持続力○将来性など
2.技(基礎能力)
○発生・発生技術:姿勢、声質、滑舌、呼吸法、アクセント、イントネーションなど
○表現力:感情・身体表現、顔の表情など
○歌唱力:音色、音域、音程、リズム感、表現力など
*歌唱審査または、自己PRにて歌唱した場合
○読解力:役分析、状況設定、距離感、思考力など
<以下に自己PR、質疑応答から>
○自己プロデュース力○新年、世界観○セールスポイント、特技の明確さ○オリジナリティー○トークの面白さ、切り替えし、構成力○一般常識、知識など
3.体(健康面、ビジュアル)
○体のバランス、歪み○ファッションセンス○ヘア、メイク○トータルな自己表現など

以上、いかがだったでしょうか?
前述したように、これらのキーワードが全てではなく、合格の基準でもありません。すべてが完璧だから合格するというわけでもありません。
審査員も人間ですから、個人の主観により、合否の基準は異なります。
極端な例では、はじめの数十秒、名前と「よろしくお願いします」、また出だしの台詞で合否を8割決めてしまう審査員もいるくらいです。
普段のレッスンの成果が、すべて最初の切り出しに集約されるという見方ですが・・・厳しい世界です。

声優・俳優・タレントを目指す上で大切なこと

今回は"声優・俳優・タレントを目指す上で大切なこと"についてです。まず、どんな職業にもいえることですが、

1."本気である"ことです
例え、"なんとなく、なれたらいいな"から始めたとしても、少なくとも専門学校を卒業し、養成所などに入る段階では、本気で目指していないと、続きません。理由は簡単で、本気で目指している人達がいるので、技術的にも本気の人達に適わなくなっていくからです。その上で、前回の審査員の見るポイントと重なりますが、

2."心・技・体"です
特に、
○心(人柄。キャラクター性):礼儀、マナー
○技(基礎能力):発生・発音技術、表現力
○体(健康面、ビジュアル):ファッションセンスなどです
*詳しくは、前号を参考に!
さらには、最近、業界で言われるキーワードは

3.セルフ・プロデュース能力です
セルフ・プロデュースとは、直訳すると、"自分を作り出す、前に押し出す"という意味です。声優・俳優・タレントとして成功している人達の多くは、このセルフ・プロデュース能力に優れています。
同じ資質を持った人同士であれば、役を自分で作り上げる力、また次なる自分、次なる何かを提案できる人が優位になります。
そこで、これまでの授業などで効果的だった、セルフ・プロデュースの簡単な方法を紹介します。

@自分を見つめる
自分の信念、、目標(1,2,3年後など細かく設定)などのビジョンを明確にする

A他の声優・俳優・タレントを研究する
演劇、映画、音楽から歌舞伎、落語などの古典芸能力まで、あらゆる芸術に触れ、他の表現者をよく研究し、なぜ上手いのか?などを分析する。
*声優の場合は、プロのボイスサンプルが参考になります。

B自分のビジョンを逆算し、達成するためには、今何をすべきかを決め、具体的に実行する。
あまり難しく考えず、例えば、3年後、プロダクションの所属をめざし、
○自分から積極的に人と話ができるようになる。
○あらゆる芸術に触れ、分析ノートを作る。
○発生・発音の基礎(声量、滑舌、声の高低など)を習得し、読解力を養う。
○ダイエットする。明るめで、自分らしい服の色を身につける。
など、簡単なところから始めてみてはいかがでしょう。

また、自分を一言でいうと何?
自分に"タイトル・キャッチフレーズ"をつけてみるのもセルフ・プロデュースの一つ。実は僕自身の"オーディション研究家"の肩書もセルフ・プロデュースの一環です。これらのセルフ・プロデュースを試みていくことにより、次回のテーマである"自己PR"にも活かすことができるでしょう。

自己PRについて

オーディションに関する質問で、最も多いのが"自己PR"についてです。
なぜ、自己PRが難しいかというと、
○PRの決まった作り方、形式がない
○自分のレベルアップとともに内容が変化する
○同じPRでも、聞く人により感想が異なる

などなど。
オーディションの種類にもより、PR内容なども異なるので、今回は、"専門学校生などの経験者が、あるプロダクションのオーディションを受ける場合のPR"について考えてみます。(特技被露などはいれず、トークのみの場合)

"PR"とは、"パブリック=公的"、"リレーション=関係"の略。
もともとは、企業などが、「"公的"な理解、"関係"を築いていこう」という意味ですが、宣伝・広告の類似語としても多く使われています。
"セールスポイント=強調できる商品の特長、長所、魅力など"を明確にし、アピールをするのが一般的です。声優、俳優、タレントは自分自身が商品になるので、PRにより、プロダクション側(公的)と関係を築いていく、"共感"を得なければなりません。

では、プロダクション側は自己PRに何を求め、知りたいのか?
@その人の"人となり"、話す表情、内容(心・体)
A台詞以外の発音法、話し方、表現力、構成力(技)etc

*VOL.2の"審査員の見るポイント"「心・技・体」参照

プロダクション側の求める人材像、方向性、特色などと合致し、"将来的に仕事を共にしたい"と感じてもらえればベストです。ただし、プロダクションにより、それらが異なるので、情報をできるだけ収集したうえで、何パターンもPRを作ってみることが大切です。
*それでも、オーディションの合否というのは、スポーツの試合と同様に、自分以上の力(運)が働きます。

異常を参考に、具体的な"PRの作り方"としては、
○自分の信念(自分が正しいと感じる考え)は?
*これなでの生活、レッスン経験、またスポーツ、趣味などの実体験
○自分を一言でいうと?自分にタイトル・キャッチフレーズをつけるとしたら?
○なぜ、この業界を目指したのか?動機は?
○自分の能力、技術、実績、特技は?逆に強化すべき技術は?
○将来のビジョン、目標、社会にどのような影響をもたらしたいかetc

これらの中からPRすべき点(セールスポイントをふまえ)を絞り、エピソード(実体験)をまじえながら、構成していきます。

最後にPR事例をひとつ
*実際の声優ナレータープロダクション合格者のPRを典型的なパターンとしてアレンジしています。
「私は声の仕事を通じて、子ども達に夢や目標を持つことの大切さを伝えていきたいと考えています。 幼少の頃から絵本に触れ、高校時代に保育園で紙芝居を演じた時のこども達の輝いた笑顔、感動が忘れられません。
また、自分を漢字一文字で表すと、"柔"です。
声質や雰囲気の柔らかさを生かしつつ、聞く人に安心感や親しみをもたらしたいと考えています。将来は、教育番組のナレーションや朗読などの分野にも広げ、幾度にも表現の出せる役者を目指しています。」

質疑応答について

「あなたが将来、ライバルだと思う声優はどなたですか?」「自分で点数をつけるとすれば、今日のオーディションは何点ですか?」「今日の服装(ヘア、メイク)のコンセプト何ですか?」各プロダクションオーディションで、実際にあった質問です。

質疑応答は、実技審査(演技や自己PRなど)で判断できないところなどをより深く知ることが目的となります。また予想外の質問を投げかけることで、本人が意識していない素の状態(作っていない声、態度、自分への理解度など)を見る場合もあります。

<一般的な質疑応答の目的>
@人柄(性格)
Aプロ意識
B一般常識、知識など

結果的には実技審査を含め、各プロダクションの求める人材に合うか否かが判断されます。*プロダクション所属、養成所入所オーディション等の場合

具体的な質問項目は審査員により異なりますが、
○なぜその質問をするのか?
○その質問の意図は何か?
○どんな答えを求めているのか?など

真意を即座に汲み取ることが必要です。
そして、自分なりの答えを的確に伝えることです。

即答するには、あらかじめ多くの質問事項を想定し、その答えを準備すること。
(逆に即答できない場合の策も考えておくこと)トークの練習をすることも必要です。訓練により頭の回転、反射神経も鍛えられ、話題を広げられるようにもなります。常日頃から一般的な知識や情報を収集しストックするとともに、自分の得意分野をより深めておくことも大切です。下記によくある質問項目を列記しますので、自分なりの答えを全て明確にしてみましょう。
<よくある質問項目>
○履歴書(プロフィール)で気になった項目(特に趣味・特技・スポーツ・尊敬する人・好きな言葉・媒体・志望動機・PRなどから)
○将来の志望ジャンル(声優・俳優・タレントのジャンルまた、TV、舞台などのメディア別)
○将来の目標(人、また3・5・10年後のビジョンなど)
○性格に関すること(信念・長所・短所・集団でのポジションなど)
○芸歴、経歴、資格などに関すること
○得意な役、挑戦したい役、役の幅など
○現在の課題点(技術など)
○最近の気になるニュース、時事に関することなど

〜トークのテクニック〜

オーディションにおいては、実技等の技術とともに、トーク力が求められます。自己PR、質疑応答、またプロダクションによっては、そのまま「フリートーク」という課題もあります。
そこで今回は、"トークの5つのポイント"についてピックアップします。

1.テンション・キャラクター作り
話す際の全体の雰囲気作りとして、"自分らしい"テンション、キャラクターを設定します。

*"自分らしさ"がわかりにくいという人は、まわりの親しい友人などに自分の良いところ(雰囲気、性格、長所)を聞いてみる。
例:さわやか、好青年、親しみやすい、面白い、大真面目、天真爛漫など

2.発生・発音
基本的には、声を前に出し、聞き取りやすさを意識します。

*専門的にはボイスコントロール、滑舌などを訓練していきます。

3.表現法
単調にならないように、メリハリをつけます。強調したいところなど声の高低、強弱、緩急、間など使い分けていきます。

*口癖、無駄な言葉のチェック
"えー、あのー、まぁ、なんとか、ということで、という感じ"などの無駄な言葉、口癖がある場合は減らしていきましょう。

4.テーマ・内容(ネタ)作り
自己PR、フリートークともに、基本パターンとして60秒程度(その他、30秒、90秒など)のものを作ります。 フリートークテーマについては、まず"今、伝えたいことは何か?"を自問自答してみます。日々の実体験や得た情報などから、自分の印象に残っていること、自分なりの意識を掘り下げ、独自のものを作っていきます。また、
○基本的には、明るく、前向きな話題
○はじめて聞いても理解できる内容を心がけましょう。

*自己PR、質疑応答の内容例は、前号を参考に。
*ネタがないという場合は、日常的に意識的に探し出すことが大切。

5.構成法
下記に一般的なトークの構成法例を4つ挙げます。1つの構成法にこだわらず、自分なりに組み合わせアレンジして下さい。
@起承転結法
○起...話の切り出し
○承...話を受けて広がる
○転...場面を転じる
○結...結論、まとめ
APREP法
○Point...要点
○Reason...理由
○Example...事例
○Point...まとめ
B箇条書き法
はじめに、要点ポイントの数をあげ、それにそって述べる。
C時系列で述べる
過去、現在、未来、また時間の経過で述べる。

*原稿を全て書き起こす必要はありません。むしろトークが作文調にならないように注意。

オーディションでは、結果的に審査員の心をとらえ、"また会いたい"と思ってもらえれば、"合格"です。そのためには、"どうすれば審査員が興味を持つトークになるのか?"を全ポイントにおいて考え抜くこと。独りよがりやワンパターンではなく、多くのバリエーションを作ってみることです。そして、実際に場数を踏み、審査員の反応を見、経験を積むことで、より上達していくでしょう。


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