
マンガ・イラスト
遠回りも、迷いも、全部“物語”になる。描き続けた先で見つけた、マンガ家という仕事。
マンガ家 ゆとと
- 職業:
- マンガ家
現在の仕事内容について
現在はコミカライズ作品の作画を担当されているとのことですが、どんな作品を手がけているのでしょうか?
今は2作品の月刊連載を担当しています。『王都の行き止まりカフェ『隠れ家』〜うっかり魔法使いになった私の店に筆頭文官様がくつろぎに来ます〜』『異世界薬局の調剤室』(ともにKADOKAWA)です。どちらもコミカライズの作画担当として関わっていて、毎月の連載に合わせて原稿を進める日々です。
コミカライズならではの苦労もあると思います。特に難しさを感じるのはどんな点ですか?
原作は文字で表現されていますが、マンガは絵で表現するので、文章のニュアンスをどう絵に翻訳するかが難しいですね。マンガは文字量が多いと読まれなくなるので、原作の空気感を損なわないように、セリフやシーンを取捨選択していく必要があります。特に、小説で丁寧に描かれている感情の揺れを、限られたページでどう表現するかは毎回悩みます。
構図や表情づくりもすごく繊細な作業ですよね。作画で意識していることは?
まず原作をじっくり読み、頭に浮かんだイメージを元に「どの場面をどう描けば読者に伝わるか」を丁寧に考えています。構図やコマ割り、キャラクターの表情がほんの少し違うだけで、読者が受け取る印象は大きく変わります。だからこそ、1コマごとに「この表現で本当に伝わるか?」と自問しながら描いています。大変でもありますが、納得できる表情やシーンが描けたときはとても嬉しい瞬間です。
マンガ家のやりがいとは
連載を続ける中で、どんな瞬間にやりがいを感じますか?
月刊連載なので、締切前は本当に大変です。私はスケジュール管理があまり得意ではなく、夏休み直前に宿題をがんばるタイプなので(笑)、月の後半は大騒ぎです。でも、そうして描いた原稿が仕上がっていく過程はすごく楽しいんです。ベタやトーンが入るとページが一気に形になっていくのでテンションが上がりますし、会心の表情が描けたときは数時間眺めてしまうこともあります。読者やファンの方の反応を見たときは、さらに嬉しくなります。「このシーン良かったです」と言っていただけるだけで、また次の原稿も頑張ろうと思えるので、やりがいは本当に大きいですね。
マンガ家を目指した原点は、「絵を描く」のが好きだった幼少期に
そもそも、ゆととさんが「マンガ家」を意識し始めたのはいつ頃ですか?
幼稚園の頃から絵を描くのが好きで、漠然と「絵を描く仕事をしたい」と思っていました。でも、家庭の方針もあってマンガはこっそり読む程度だったので、とにかく絵を描いていましたね。それから、中学高校と年齢を重ねてもマンガ家になりたい気持ちは変わらずありましたが、どうすればマンガ家になれるのか、その方法が全然わからなくて、ずっと憧れのままでした。
高校卒業後は大学に進学されたと伺っていましたが、そこから創作に本格的に向き合うようになるんですか?
はい。大学生になって親元を離れ、自由に創作できる環境になったことで、絵を描く時間が一気に増えました。ゲームや小説のワンシーンを描いた感想絵をXに投稿するようになり、「まさにこういう絵が見たかった」と反応がもらえるのがすごく嬉しくて。自分のイメージが他の人に伝わるのが楽しく、創作にのめり込むようになりました。
今の仕事につながる姿勢を教わった総合学園ヒューマンアカデミー
その流れで、大学在学中に総合学園ヒューマンアカデミーと出会うのでしょうか?
はい。大学で毎日のように絵を描くうちに、「独学だけではマンガ家には近づけないな」と感じるようになりました。プロの技術を学べる場所や、編集さんに見てもらえる環境が必要だと思い、専門校という選択肢を意識し始めたんです。
ただ、進学を決めるにあたっては、最初は親に反対されました。厳しい家庭だったこともあり、簡単には納得してもらえなかったんです。それでも諦めずに相談を続ける中で、"在学中の2年間でデビューすること"という条件を提示されました。かなりハードルの高い条件ではありましたが、それだけ本気で取り組む覚悟も固まりましたし、最終的には「やってみなさい」と背中を押してもらい、総合学園ヒューマンアカデミーに進学することを決めました。
総合学園ヒューマンアカデミーに入学して、特に印象に残っている学びは何ですか?
入学して最初に驚いたのは、「とにかくマンガを読みなさい」「本屋にあるマンガは全部教科書だよ」という講師の言葉でした。絵の描き方だけでなく、作品に触れる姿勢そのものを教えてもらえたのが、今振り返っても大きかったなと思います。
"マンガは教科書"。とても印象に残る言葉ですね。
本屋に並ぶマンガは、売れているかどうかに関わらず、編集部が"商品価値がある"と判断して世に送り出した作品ばかりだから、どれにも学ぶべきポイントがある──と講師に教えていただきました。今でも原稿を描く前には勉強のために必ず数十冊のマンガを読みますが、読むたびにマンガという表現の奥深さや、多彩な見せ方に引き込まれます。
他のマンガ家さんは、自分にとってはライバルでもありつつ、完成した作品を市場に出している"尊敬すべき師"。そういう視点で作品を読むようになれたのは、総合学園ヒューマンアカデミーでの学びがあったからこそだと感じています。
また、描けない場面にぶつかることもありますが、実際は行き詰まったときほど他のマンガの表情や構図、演出からヒントを得られることが多いんです。今のコミカライズや月刊連載の制作でも、作品に触れ続けるこの姿勢が私の制作を支える大切な土台になっています。
担当付きや名刺獲得のチャンスをつかめる全国マンガ合宿
在学中に、出版社や編集者と関わる機会はありましたか?
総合学園ヒューマンアカデミーでは作品を見てもらえる機会が多かったのですが、特に大きかったのは「全国マンガ合宿」です。100社前後の出版社・企業が集まる持ち込みイベントで、1日で何社もの編集者さんに会える貴重な場でした。普通なら時間をかけて回る出版社にも一気に持ち込めるので、短期間で多くの意見を得られるのが魅力でしたね。
全国マンガ合宿では何社くらいに持ち込みをしましたか?
自主的な持ち込みも含めると、最終的に十数社に作品を見ていただきました。実際に持ち込んでみて驚いたのは、同じ原稿でも出版社によって評価がまったく違うということです。A社では褒められたポイントが、B社では「ここが弱いです」と指摘されたりして、自分の作品がどう受け取られるかを多角的に知ることができました。
こうした違いを知れることで、「自分の作風がどの出版社に合うのか」がだんだん見えてくるんです。編集部のカラーをつかむ手がかりにもなるので、全国マンガ合宿は本当に大きな判断材料になりました。作品を持ち込めば持ち込むほどチャンスが増える、という意味でも、合宿ならではの貴重な経験だったと思います。
最初はものすごく緊張しましたが、何社も回るうちに少しずつ慣れて、質問したりメモを取ったりする余裕が出てきました。担当付きや名刺獲得のチャンスもあり、「数を打つほど機会が増える」のは全国マンガ合宿ならではだと思います。
ゆととさんはコミックジーンにも自主的に持ち込みをしていますよね。どのようなことを意識しましたか?
コミックジーンさんは全国マンガ合宿に参加していなかったので、自分で予約して本社に持ち込みました。そのとき意識していたのは「編集さんのお話を全部自分の成長につなげる」という姿勢でした。プラスの意見もマイナスの意見も、自分を伸ばす材料になると思っていたので、「厳しい意見も遠慮なくください」とお願いしていました。
実際にキャラの動きや画力など、かなりたくさんの指摘をいただきましたが、全部メモを取って、わからないところは質問し返していましたね。最初はもちろんめちゃくちゃ緊張して、心が折れそうになることもありました。でも、持ち込みを重ねていくと徐々に慣れてきて、編集さんとの会話の中で"作品が良くなるヒント"を拾えるようになった気がします。
担当編集とのやりとりなど、コミュニケーション能力も重要ですよね。
そうですね。マンガ家というと「画力さえあれば大丈夫」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際はコミュニケーションが本当に重要だと感じています。コミュニケーションといっても、ただ話が上手いということではなく、わからないことをわからないと素直に言える勇気、自分の実力や状況をごまかさずに伝える誠実さ、疑問点はその場で質問して確認する姿勢、指摘は全部メモして持ち帰る習慣。社会人として最低限のコミュニケーションができるかどうかが、とても大きいんです。正直、マンガ家こそコミュニケーション力が求められる職業だと考えています。
ゆととさんは在学中にデビューしましたが、その実現のために必要なことって、何だと思いますか?
私の場合は「在学中の2年間でデビューする」という条件が原動力にはなりましたが、いちばん大事なのは、まず自分の作品を"完成させる"ことだと思っています。仕上がった作品がないと、出版社に持ち込んで意見を聞くこともできないので、とにかく描いて形にすることが最初の一歩です。
そしてもうひとつ大切なのが、効率よく努力すること。私は、持ち込み先で編集さんのアドバイスを聞くことが成長の近道だと感じています。編集さんは、作り手のために必要なことを正直に伝えてくださるので、「自分のどこが足りないのか」「どうすればもっと良くなるのか」をその場でどんどん質問して、いただいた言葉を吸収してきました。指摘を受け止めるのは決して楽ではありませんが、その言葉を受けて原稿の完成度を高めることが、デビューに近づくいちばんの方法だと思っています。
講師として学生に伝えていること
現在は月刊連載を抱えながら、総合学園ヒューマンアカデミーで講師も務めていますね。どんな思いで学生さんと向き合っていますか?
授業で伝えているのは、「周りにある創作物は全部教科書だよ」ということです。マンガはもちろん、小説や映画、アニメなど、作品に触れ続けることが自分のアウトプットにつながるので、とにかく"読む・見る"ことを止めないでほしいと話しています。行き詰まるのは誰でもありますが、そういうときほど他の作品にヒントがあるので、「困ったらまず他の作品に触れなさい」と学生にもよく言っていますね。
これは、私自身が在学中に先生から教わったことで、今も連載の制作で強く実感している大事な姿勢です。作品を見る目を養うことが将来必ず武器になると思っています。
学生さんの中には、ゆととさんのアシスタントとして関わっている方もいるそうですね。
はい。希望者の中で、作業内容やスケジュールが合う学生には、ベタやトーン、背景など実際の原稿作業を手伝ってもらうことがあります。プロの現場で求められる"丁寧さ"や"スピード感"を体験できるのは、在学中ならではだと思いますし、学生にとっても現場感覚をつかむ良い機会になるはずです。
在学中にデビューしたときは、右も左もわからないことばかりで、原稿の進め方や契約まわりなど、不安に感じる部分がたくさんありました。そんなとき、担当の先生方がアシスタントとして作業を手伝ってくださったり、プロとして必要な判断を丁寧に教えてくだいたりして、本当に助けられました。卒業した今でも、正式にお仕事として協力していただくことがあり、現場で活躍する先生方に支えてもらえることのありがたさを日々感じています。
私のような若手にも真摯に向き合い、プロとしての姿勢を示してくださる先生方がいたからこそ、今の自分があります。こうした人とのつながりに恵まれたのは、総合学園ヒューマンアカデミーに通ったからこそ得られた財産だと思っています。
今後の夢や目標、そして高校生へのメッセージ
今後の夢や目標について教えてください。
そうですね。現在担当しているコミカライズ作品が、もっと多くの読者に届いてくれることがいちばんの願いです。重版やアニメ化といった大きな目標も、いつか叶えたいと思っていますし、作品を託してくださった原作者の先生方や編集さんの期待に応えられるよう、今後も一話一話を大切に描いていきたいですね。
最後に、マンガ家を目指す方へメッセージをいただけますか?
私は学生時代、「どうしたらマンガ家になれるのか」がわからずに、かなり遠回りをしてしまったタイプです。描きたい気持ちはあっても、進み方がわからず不安になることも多かったので、同じように悩む人の気持ちはよくわかります。
だからこそ、総合学園ヒューマンアカデミーのように、マンガの描き方だけでなく、持ち込みやデビューの流れなど、「進み方」を具体的に教えてくれる環境があるのは、本当に心強いと思います。先生方も仲間たちも、夢を目指すあなたの味方になってくれる存在です。マンガ家は一人で頑張っているように見えて、実は周りの支えがとても大切な仕事です。不安があっても大丈夫。自分の"描きたい"という気持ちを信じて、まずは一歩進んでみてください。
マンガ家 ゆとと
- 職業:
- マンガ家